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EP 10

俺は千景が離れていってしまったら、どうしたらいいのかと途方にくれるだろうと言うのに。

やややそれより……そうだった、一人の男としてまったく見てもらえていないんだった。(;´д`)

企業同士の懇親パーティーで、俺が周りに女性をはべらしていても、千景はうんともすんとも言わず、ただひたすら無心でオードブルに喰らいついてるもんな。

そこには1ミリの嫉妬もなくて。1ミリのヤキモチもなくて。

「はは。どーせ、救いようのないスケベキモオヤジとでも思われてんだろうな……」

言葉にしたらさらに落ち込んだ。拳をぎゅっと握り込む。

「……いや、さすがにキモいとは思ってないだろうけど」(←一縷の望み)

とにかく、考え直してくれるよう、説得しなければ。

「そうだ!! ボーナスを200万にすれば首を縦に振ってくれるかも!!」

さっそくLINEした。ピロン。OKのスタンプ。

「よっしゃ即答ww」

解決した。

「マジか」

スマホを前にして私は困惑している。

辞表を出したら、報酬が200万に上がった。

「このお金があれば……トーマくんグッズを永遠に購入できる」

脳がバグって即答してしまった。宝クジにでも当たったかのような軽い興奮もある。ひゅーひゅー⤴︎

なんか駄々をこねて金額を釣り上げたクレーマーになってしまった感は否めないが。そう考えると、少しだけ胸が痛んだ。

「仕方がない……とにかくカエルをなんとかすれば良いだけだ。トーマくんのためにここは頑張るしかない」

その日は200万円のスマホを抱きしめて眠った。

次の朝出社すると、「あーっと千景、おはよう。今日も可愛いね。これ良かったら」と社長がもじもじしながら、包みを渡してくる。

ん?

今、可愛いねと?

「これは……なんです?」

???

「千景さ、もうすぐ誕生日だろ? 今日から誕生日までの一週間さ、毎日プレゼントしようと思って」

「そうですか。そんなことしていただかなくても。ですが、せっかくご用意してくださったので、これはいただいておきます。ありがとうございます」

一週間ってもしかして、部品がひとつ入ってて一週間すると完成するヤツ? でぃあごすてぃーにのヤツ?

「開けてごらん」

社長がずいっと近づいてくる。やたら近いやたら。

私がゴソゴソと包装紙を開けると、なんと。

「これはダイヤ……のネックレス? ですか?」

ゴールドのチェーンの先には、ダイヤモンドが燦然と輝いている。朝の太陽光を吸収してキラリキラリ。デザインもシンプルな、可愛らしいネックレスだ。

「うん。貸して」

言われるままに手渡すと、後ろに回ってネックレスをはめてくれた。

前に回り込んで、ニコニコ。

「うん、思った通り!! 似合うよ」

「こんな高価なものいただけません」

私がそっと指先でダイヤを触ると、その手をパシッと握り、そっと下げた。

「いいんだ。千景はいつも頑張ってくれているからね」

「……社長、もしかしてコレ今回の報酬から……」

社長は慌てて顔を左右に振ると、「ないない! ボーナスからなんて、さっぴかないから安心して!!」

わかりました。それならオッケーです。

私は正式に謝意を申し上げ、その日は一日中ネックレスをしたまま仕事をした。

こんな可愛らしいジュエリー、いまだかつて、買ったことも身につけたこともない。そわそわして何度もダイヤを触ってしまう。もし、チェーンが切れてしまったら? アロンアルファあったかしら? と思うと気が気じゃなかった。

(なんという貧乏性)

Vチューバーアイドルオタクには、恋愛とはこれほど、ほど遠い。

(こんな私で恋愛の練習になるのかな……ってか私が練習させてもらってる感がエグいww)

帰ったらカエルの生態でも研究してみるか。

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