その5
飛行中に街の光景が見えたがひどい有様だった。
端的に言えば『地下』が『地獄』に変わっている。
さっきまでのO2と同じように大体のやつが嘔吐していたおかげで数十メートルでもなんか臭うし、吐いてないやつがいたなと思えばやはり体のどこかが肥大化して緑色になっていた。
しかもたちの悪いことにその肥大化したものがいろんなところに当たって普通に歩くだけでも何かを破壊するもんだから各所に瓦礫の山が積み上がっているという。
流石にすげぇ臭いし、これ以上見ていると精神衛生上悪そうだから最短距離でとっととコアタワーに向けて街を通過した。
そこから5分ほどで到着したコアタワーもコアタワーでいつもの形相が違っていた。
上空に浮かぶ光球…は一旦置いておくとして、タワー入り口付近にかなりの大穴が空いている。
もしかしてあの光球の仕業なのだろうか、だとすれば凄まじいエネルギーだ。
アレはとりあえず放っておいてホノカを探すためにこの大穴に飛び込む。
意外と深かったが10分ほどで底に着いた、瓦礫の山が広がっていたが残存するものを見る限りここはなにかの研究室だろうか。
「センサーオン」
装備に搭載された複合センサーを起動すると瓦礫の下に生命反応があった。
「ホノカか!?よし…」
O2が念じるとバックパックが切り離され、銃に組み換わって右腕に装着された。
「拡散型ロードバスター、シュート!」
銃口から発射されたエネルギーは拡散状に広がって瓦礫をふっ飛ばす。
「いた」
どうやらさっきので中にいた人も一緒にふっとばされたようで瓦礫の一番上で見つけたので駆け寄る。
「ホノカ!」
「あぁ…ようやく復活した…これで、これで…」
その人が顔をと手を上げそんなようなことを終始呟く、その顔はよく似てはいるがホノカではなかった。
「ここの人か…?」
「おお…神よ…神よ!今…私もそちらに!」
その人はそう叫びながら光の粒子となって消滅した。
O2がその軌跡を目で追うと粒子が上空の光球に吸い込まれていくのが見えた。
「…俺も、こうなるのか…?」
さっきの苦痛を思い出す、街のみんなもこうだった。
まだ死にたくはない、なんだかんだ今の仕事は気に入ってるし、なによりまだまだ遊んでいたい。
「…なんとかするか、アレ」
色々文句も言いたいし、何よりあの一部肥大化した体じゃなにか不便すぎる。
「ロードサーベルアクティブ、アンチグラビティ発動!」
O2は右腕の銃を剣に組み替えて大穴を駆け上がった。
私は光の中にいる
否、これは光そのものか
心も体も境界線が溶けて全てと一つになっていくのがわかる
『私』が保てない、今やこの自我…私が私だと認識する精神だけが私だ
居心地はとてもいい、だが…
これは私か?
その思考が出るたびに何かにそれを抑制される
何度も、何度も
考えることに疲れて静かに目を開けると少女がこちらに微笑みかけていた
この少女は誰だっけ?
私って、なんだっけ