6行き先決定
どうやら俺たちは、これからまた別の世界に飛ばされて世界を救わなければならないらしい。
最近流行りのライトノベルでよくある奴だ。
俺自身そういう系統の本は好きだったからこそ知識はある。
大抵そういう本の中では、主人公は特別な能力を貰いその力で自分のやりたい事を実現させながら困難に立ち向かっていくというストーリーが王道だ。この流れだと俺もそういうテンプレ的な流れに沿って強力な能力を貰い異世界生活を送れるのだろうか。
(でも俺が読んだ本ではいきなり召喚された人間が殺される本は中々なかったぞ。ある事にはあったがそういうのは大抵辛い冒険が待っている事が多い......)
俺は過去の経験と照らし合わせこれから起こる事が過酷である事を確信する。どうかイージーなものであってくれ。
「それでね! なんの世界を救って欲しいかというとね......いっぱいあるの! ごめんね!」
「ど、どういうこと? 一個の世界を救えば元の世界に帰れるんじゃないの?」
不安からつい言葉が出てしまったようだ。佑ちゃんがアキュロスに疑問を投げかける。
「うーんまあそうだね。元々そうだったんだけど色んな歪みが生じてしまって世界がいくつかに割れてしまったの。だからその割れ目を倒すために君達の力を借りたいんだ!」
アキュロスがまるで大したことはないと言う感じで元気よく俺たちに伝えてくる。
こいつは元気よく言えばなんでも通ると思ってるんじゃないかと思う。俺が知っているものだと1つの世界をゲームクリアだ。
「あまりにも厳しすぎないか!」
俺はなんとかこの言葉を喉の奥に押さえ込み堪えることにした。
空想の世界でも主人公が救う世界は一つだ。複数なんてあまり聞き馴染みがない。
「なんだか大変そうでござるね。一応聞くでござるがやっぱりそれを拒否することはできないでござるか?」
「もちろん!私のゆうことは絶対だから!」
「じゃあなんかクリアしたら褒美とかあったりするのか?」
こういう異世界転生系にはクリア報酬で何かもらえるというのは王道の話だ。俺はそれを確信し、アキュロスに質問する。
「オホホやっぱ気になっちゃうよね! ズバリ! 現生に帰った後にも有効な願いをなんでも叶えてあげる! 多分君たち人間が思いつくことならなんでもね」
何でも願いが叶う......王道の展開だが自分で決めれるという所はポイントが高い。
俺は未来の自分が課さられたミッションをクリアし理想の人生を生きる自分を頭の中に思い描く。
俺は自分の中でやる気が出始めていることに驚きながらもワクワクしていた。
「まあとりあえずじゃあ......織本くん! 君が1番近いからホラ! あそこの壁の横についてるレバー引っ張って貰えるかな!」
「あれのことか?......」
アキュロスが指示した場所には真っ白なお花が描かれたどデカい絵画が異質な存在感を放っていた。それでいて横にあるレバー。これも何か普通ではない気がする。
「フンっ!」
織本が力を入れレバーを下に倒す。
「ガチャン!!」
とても大きな音が鳴ったかと思うとレバーが下に降りると同時に純白のお花が描かれた絵の映像が回転を始めクルクルと回転している。まるでパチンコみたいだ。やってことはないけど。
そして回転が落ち着くと全く違う別の絵のなっていた。
そして、その絵には......
「なにこれ、怪物? きもいんだけど」
それは教科書で見たことあるような昔ながらの画風で描かれた絵だった。絵の中で鬼のようなものが人間を追いかけ、あるものは武器を振り回して人間を吹き飛ばし、あるものは死んだ人間の肉体を貪っているように見える。
そんな気味が悪い光景が大きな壁いっぱいに描かれたものに変更された。
「ふーん......君たちの最初に行く世界は鬼世界か......まあ良くはないけど悪くはないんじゃない?」
「まあとりあえず外に出て確かめてみてね! ステータスオープンって言えば必要な情報は出てくるから! それじゃああそこの扉から出てね! ふぁいと!」
そうアキュロスが叫んだ瞬間何もない暗い壁だった場所に突如扉が生まれた。
「ううう、行きたくないよ迅くん......」
「2人とも冒険の予感がするでござるね......。拙者も楽しみでござる!」
「おい愛香どうする? まあいくしかないか」
「そうね、こうなってしまっては仕方がないわ。行きましょう。」
織本と笹山はもう覚悟ができたらしい。
流石普段からやんちゃしてる連中は覚悟を決める速さが違うな。
「それとさっきから一言も話してくれない倉本くん! 黒音ちゃん! 君たちも頑張るんだよ」
「な、なに!? やっぱりあいつらも来てるのか! 許さねえ...... おい十馬出てきやがれ!てめえと黒音のせいでこんなめんどくさい事に巻き込まれる事になったんだからな! てめえらだけは絶対許さねえ!」
「あ、ごめん織本くん! その2人なら私が声をかけた瞬間行っちゃった!」
「チッ......愛香! 急いであいつら追うぞ」
「ええ。流石にあの2人は許せないわ」
先程までは感じなかったが蔵本に対して2人とも相当怒りが溜まっていたらしい。2人がもう既に外に出ている事を知った瞬間織本と笹山は外に出てしまった。
「俺たちも行くしかないか......」
「そうだね迅くん......」
「楽しみでござるイヒヒ」
それぞれ何かしらの不安を抱えながら俺たち3人も扉をくぐり外の世界に出た。
「なるべく少ない回数で済めばいいわね。いい固有スキルが出る事を私は祈ってるわ」
そんな声が聞こえたような気がしたが目の前のことに集中し過ぎて本当にそんな事を言っていたかどうかは今後一才知ることはないだろう。