26実践的授業①
「大規模侵攻ってなんだ先生? 鬼たちが攻めてくんのかよ?」
俺たちは広場のような所に新しい担任にクラス全員連れ出されている。
「その質問には答えよう。その通りだタイガ。諸君も知っての通りこの村は特殊な結界により鬼の侵入を拒んでいる。ただ最近村の中に入ってくる鬼が増え、尚且つ徒党を組んで侵入してくるケースも確認されている。これは個人主義の鬼の世界では極めて異例だ。」
「それでなんで侵攻してくるってわかんだよ」
イライラしながらタイガは追及する。
「口の聞き方に問題はあるが現状そのくらい血の気があった方がいいな。話を続ける。徒党を組んで侵入してくる鬼が増えたということはだな、鬼を指揮する頭目が決まったということだ」
「まじかよ......」
「やばいじゃん......」
広場に集められた生徒の空気が一瞬で重くなる。そこまで危機感を煽るようなことなのか。
「なんか空気が重いね。そんなに鬼のボスが決まることってまずいのかな?
「わからない。でもここまで周りの空気が重苦しくなるってことは普通じゃないんだろう」
昔から空気を読む事が得意ではなかったが自分でも分かるくらい空気の変化をどんよりと感じた。
「下を向くな。だから私がきたのだ。諸君らを鍛え上げ有用な存在にするために」
先生が自信満々で鼓舞するように言葉を投げかける。ただ、生徒たちの顔付きはそれでもなお暗い。
「私お母さんから聞いたことがある。昔も鬼の頭目が決まった時人間と鬼の戦いがあったって。そしてその時多くの人間が殺されたことも聞いてる......ただその時は異世界から来た人が何とかしてくれたからなんとかなったて」
その発言を聞いた生徒たちはより絶望が顔に浮き出ていた。
「でも最近異世界から人が来たって話聞かねえぞ」
「おいおいまずいんじゃねえのか」
ざわざわと生徒同士の会話が盛り上がる。不安からくる感情の乱れを落ち着かせるために誰しもが会話をしなんとか心を落ち着けようとしていると言ったところか。
ただ昔来ていた異世界人というのもやはり存在するのか。そしてその人達鬼達との戦いを勝利に導き戦いを終わらせた。
周りが不安でざわつく中自分もそんな英雄になれるのではないかと俺は少しワクワクした。
「心配するな。異世界人ならもうすでに来ている。なあそこの3人?」
「え?」
急に話を振られた俺たちは面くらい3人とも返答できず固まってしまう。
「え、そうなの? あの3人なんかおかしいなって思ったらそうだったの?」
「あんな奴らが異世界からの救世主な訳ないじゃん」
散々な言われようだな。思っていたよりも俺たちの評価は低いらしい。全部聞こえているということは伝えたいが俺はグッと言葉を飲み込んだ。
「どうする? なんか全部バレてるっぽいよ。ていうか別に隠していたわけじゃないけど」
「俺は隠していた方がいいと思っていたけどな。便利に利用される恐れがあると思ってた。ただなぜか新しく来た担任は俺たちが異世界人だってことを確信しているような気がする。隠すのは無理かもしれないな。」
「そうでござるよー! だから鬼は拙者がシュッシュっと皆殺しにするでござる! だから足手纏いは来ないでほしいでござるね。シュカ殿は是非一緒に行くでござるよ」
「おいおい......」
山田が元気よく自分が異世界人だって事をバラしてしまった。こいつはなんというか正直なやつだな。生徒たちに満ちていた暗い雰囲気が少し明るさを取り戻す。
「よく言った。お前達は稀にこの世界に現れる救世主だと私を含めた上の人間は認識している。なのでその力大いにあてにさせてもらう。励めよ」
「頼むぜー! お前ら!」
「なんか気味悪いって思ってたけど救世主様だったのね! それならそうと言ってよ!」
生徒たちの自分たちを見ていた目が一瞬で変わった。腫れ物を見るような目で見られていた俺たちだったが一気に真反対の目線を向けられるようになった。
「佑ちゃんこれはもう逃げられないよ。覚悟を決めよう」
「う、うん。あの山に入るのは怖いけどここまで期待されちゃったら行かないわけには行かないよね」
「そうでござるよ。いいチャンスなんだから3人で沢山鬼を殺すでござる」
どうせミッションをクリアしないと元の世界には帰れない。別に帰りたい理由もないのだが。ただ、こんな危ない世界に居続けるのは危険だ。一刻でも早くこの世界から出るために俺は覚悟を決めた。
「3人ともいい覚悟だ。ある情報筋から聞いた所によると3人とも実戦は皆無に等しいらしいな。まずはこれを持て」
そう言って新しくきた先生は、鞘に入った剣を俺たちに投げ渡した。
「俺は属性は使わん。だから3人がかりで殺す気で切り掛かってこい。もちろん属性の仕様は許可する」
その言葉を発した瞬間恐ろしく綺麗な所作で、先生は腰にさしていた装魔刀を抜き剣を構えた。




