25何事もない
「昨日は本当に大丈夫だったのか? あんな夜遅くに傷だらけで帰ってくるなんて心配するだろ」
「大丈夫。怪我はしちゃったけど命はある。死んでないから別にこれでいいんだ」
「それならいいんだが」
俺は学舎で佑ちゃんと昨日あった出来事について話す。佑ちゃんがいうには昨日先生と2人で鬼がいる山の中に入った所鬼に襲われたらしい。
人間に近い姿をした2本の角が生えた鬼に出会ったそうだ。そして、先生は鬼からの攻撃を受けた後遠くへ飛ばされ、佑ちゃんは1人で鬼と戦う事になったらしく最後まで結局再会することはなかったという。あの温厚な先生が佑ちゃんを置いて逃げるとは考えにくいが、まずは佑ちゃんが無事に生きて帰ってきたことを一緒に喜ぶ。
「それにしても佑殿は羨ましいでござるね〜。拙者もそんな強い鬼と戦ってみたかったでござる」
「流石山田くんだね。僕は正直もうこりごりだよ。たまたま上手く属性が使えたから良かったけどすごく怖かったし。もう鬼には会いたくないよ」
「まあ何はともあれ次先生と山に入るのは拙者でござるからね。迅殿悪いでござるがこれは譲らんよ」
「好きにしろよ」
やっぱり山田は好戦的だな。俺は正直佑ちゃんから聞いた鬼との戦いの話を聞いて正直足がすくんだ。
同級生の川島が理不尽に女神に殺された所を見てはいたが、なんだかんだ自分たちは選ばれた人間。死とは縁遠いものだと感じていた。だが佑ちゃんの話を聞いてわかった。この世界においては俺たちも例外なく死と取り合わせの環境にいる。その事を実感させられた俺は2人には言えないが、かなりの恐怖を感じていた。
「静かに。授業を始める。」
「あれー先生は? あんた誰だ?」
「その喋り方は目上の人に対して相応しくない。すぐに治せシュカ」
「はーい。すいません〜」
シュカが全く悪びれた様子もなく返事をする。突如教室にやってきた人物はシュカ以外の全員に緊張を走らせる。周りを見渡したが殆どの者が誰だという顔をしている。
「突然だが君たちの担任は異動となった。今日からは私がお前たちの担任だ。よろしく。」
機械のように言い放った男が挨拶を手短に済ませる。身長は高く声が低い。そして何よりも噛み締めるようにゆっくりと喋る様は、俺がイメージするできる上司と言った感じだ。
「ロイド先生はどこにいってしまったんですか......?」
か細い声で1人の女性の声が後方から聞こえた。確か名前はなんだったか......思い出せない。
「彼は異動になった」
「どこへですか?」
「これ以上応える必要はない。早速で悪いが君たちにはもっと強くなってもらわなければならない」
ピシャリと女子生徒の意見を一蹴し新しい担任は話を続け始めた。ロイド先生はどこにいってしまったのだろうか。昨日佑ちゃんと先生は一緒に鬼がいる山に行った。その事を伝えてみたいがそんな事を言えるような雰囲気ではなかった。
「なんかあの人怖いね。ロイド先生のがよかった」
「そこ静かにしろ。まあいい。ロイドの方が良かったなと今言ったな」
「い、言ってません」
「嘘をつく必要ない。心配するな。もう時期担任が私に変わって良かったと思うはずだ」
「どういう事ですか?」
「喜べお前ら。退屈な座学の時間は終了だ。今日から鬼の大規模侵攻に備え徹底的に実践訓練を始める。」
ここから退屈だった授業の時間は終わりついに教室全体で鬼との戦い方を学ぶことになった。




