24逃亡
私はあの鬼が視界に入った瞬間決めた。ここが引き際だと迷わず決めた。手頃な鬼を見つけて、ひっそりと姿を眩ませるつもりだったが嬉しい誤算だった。
私はとてつもない速度で攻撃をくらい、一瞬しか相手のことを認識できなかったがあの鬼はかなり強い。角が2本あり人間に近い姿をしていた。まさかあんな下層にあのレベルの鬼が出てくるとは。
(あれは無理だ。私が正面から闘ったとしても勝ち目はなかった。間違いなく彼は殺されただろう。いい報告が学長にはできそうだ)
私は最高の気分だと言わんばかりにスキップをしながら山を下山していく。私の属性は風。応用すれば自らの行動速度を属性の力で速くすることもできる。私はいい報告を早く学長にするため急足で学舎へと向かう。
「そんなに急いでどこ行くんですかー? 先生〜?」
「......! 君こそ何をしているイザベラ」
油断していた。まさかこんな所で自分の教え子に出会うとは。
「別にー散歩ですよー。先生こそ何してたんですかー?」
「なんてことない。ただ山の麓付近を調査していたんだ。下山して村に入ろうと試みる鬼がいないかどうかをね。そんなことよりもダメじゃないか。山は危ないから勝手に入るなと教えたでしょう?」
即興にしては悪くない言い訳だと思った。心の中にあった焦りが徐々に引いていく。イザベラという少女は私の認識ではそこまで活発な子ではない。教室内でもあまり大きな声で自分の意見を主張するタイプではなかった。
心の底からでくわした生徒がこの子で良かったと思った。
「ごめんなさい。でも新入生の子達がどんなことしにいくのか気になって実はずっと後ろついてきてました」
「.......ずっと? それはいつからだ?」
「うーん......先生が山城くんを置いて逃げていった所ら辺かなー?」
「な、何を言っている? そんな訳がないだろう!」
「えーでも先生鬼に攻撃された瞬間すごいスピードで離れていったじゃないですかー。私すぐに助けに戻るのかなと思って見てたけど山城くん置いて下山し始めるし。先生らしくないなーと思って」
鋭いな。あまり学力が高い印象はないが勘はいいのかもしれない。
「そんな訳ないじゃないか。助けを呼びに行こうと下山しようとしていただけさ」
「本当にそうなのー? まあそれならいっか」
納得したような顔をしたイザベラは私よりも先に下山を始める。まるで興味がなくなったと言わんばかりに。私は安堵で胸を撫で下ろしながら跡をついていく。
「そうだ。全く気にしなくていい。明日からまた一緒にがんば......!」
私は急激に腹部が熱を持っていくのを感じた。びっくりした私は穴が空いているであろう場所を触るととんでもない量の赤い液体がついた。
「お! まだ生きてますねー先生。やっぱり頑丈だなー」
「なぜこんなことをする? 君が私を殺す理由はないはずだろう......?」
「確かにないよ。でも先生私に嘘ついたじゃん。だから嫌い。嘘つきは見逃すことができないの。許して。嘘をつく人間は殺さないとだから」
完全に見誤った。私は徐々に意識をなくしていく体に走馬灯を眺めさせる。まさか教え子に命を奪われるとは。
「無念だ......」
「ごめんね」
私は徐々に眠気が増していき意識を保てなくなった。




