21実戦
「佑さん山に入る前にこれを渡しておきます。何があっても無くさないでくださいよ」
そう言って鬼がいる山の入り口前に先生から渡されたのは日本刀のような刀だ。
「これは装魔刀といいます。名前の通り魔力を刀にこめる事ができる代物です。我々は基本的にこの刀を使って戦います。」
綺麗な刀だ。刀の周りには綺麗な波状の模様がついている。
「私もすでに自分の分を帯刀しているのでそれは君に渡します。使い方は今から教えますね。いまから私の刀に自らの属性を流し込みます。よく見ていてください」
そう言って先生は持っている刀を強く握りしめた。すると徐々に刀の波状の模様の部分が銀色から緑色に変色していった。
「これが装魔刀に自らの属性を流し込んだ状態です。この状態で物体に刀をぶつけるとその対象に属性が流れ込みます。私の属性は風なので緑色に変わりました。これが我々の主な鬼との戦い方です」
「か、かっこいい.......」
心の底から溢れ出た言葉。ゲームでも見た事があるような綺麗な刀。すごくいい。僕も早く使えるようになりたいと心の底から願った。
「まあこれは基礎です。すぐに佑さんもできるようになるでしょう。 詳しくは実際に鬼と戦いながら教えていきます。山の入り口あたりであれば弱い鬼しかいません。安心してついてきてください」
そう言って先生はこちらの返答を待たずにまっすぐ歩き始めた。先生が歩きながら鬼について教えてくれる。
「これは授業でも話したかもしれませんが鬼の社会というものはピラミッド型になっています。最下層が3本の角が生えている鬼。こいつらは知性がなく弱いです。次のミドル層が2本の角が生えた鬼。こいつらはピンキリですが、ある程度強いものもいます。そして、トップ層が角が一本の鬼。これは出会う事はまずないと思いますが、出てきたら逃げてください」
「ある程度っていうのは傷つくなー」
言葉が聞こえたかと思うと前を歩いていた先生はいつのまにか視界から消えていた。その代わり2本の角が生えた赤色の鬼が目の前に立っていた。
「やあこんにちは。君たちしばらく前に山に入ってた人たちだよね? ずーっと待ってたんだ。会いたかったよー。
もう会いたくて仕方がなかったんだ。」
そう突然目の前に現れた鬼は飛び跳ねながら笑顔で話す。以前山田くんと迅くんと山に入ったときに見たときの鬼とは違う。以前見た鬼は3本の角が生えた醜悪なまさしく怪物と言った姿をしていた。だがこいつは違う。鬼の特徴である角は生えているが姿形は人間に近い。
「な、前会ったのと違う。 前僕が見た鬼は君みたいに喋れなかったし。もっと化け物ぽかったぞ」
「あーそれは君があったのが多分雑魚鬼だからねー。おそらく言葉も喋らなかったでしょう。全く脳を食べてない奴は知性が未熟で僕たちも困ってるんだ。その分制御はしやすくて助かるんだけどねー」
そう言って2本角の赤鬼は大笑いを始めた。
こ、怖い。外見だけでいえば汚らしい叫び声を上げる以前出会った鬼の方が怖かった。だがこいつは何か生物的な恐怖を感じる。
「僕には先生がいる。先生が護ってくれる。昔僕を守ってくれた兄のように。」
僕は笑いが止まらない赤鬼をその場で置き去りにし走って先生が飛ばされた方に必死で駆け出した。先生が守ってくれる。僕は大丈夫。こんな所では死なない。
「せ、せんせい......?」
先生が飛ばされた先に駆け寄るとなぜか先生はいなかった。飛ばされた痕跡はあるのだが先生はいない。なぜだろう? すでにどこかに移動したのだろうか? でも僕はまだここにいるよ? 先生? どこ? まだ詳しい戦い方聞いてないよ。
「あっれー? さっき蹴ったやついねえじゃんー。もしかして君ー見捨てられちゃったんじゃない?
「そ、そんなわけない! あの先生がそんなこと!」
「でもさー絶対ここまで吹っ飛んできてるわけじゃない? 死体になってるならここにいるはずだろう? あの人間は逃げた。 現実逃避しても何も変わんないよ」
「う、嘘だ......」
「絶望してる所悪いけどうちのボスがお怒りでね。君たち人間を早く連れ帰らないといけないんだ。だから大人しく僕についてくるか、ここで死ぬかどっちがいい?」
「.....」
恐怖のあまり言葉が出ない。僕はここで死ぬだろうか。この世界でも何もやり遂げられず元の世界にいたときみたいに惨めに死ぬのか。誰の期待にも応えられず役にも立てず自分を肯定できないまま自分の人生が終わる。
「そんなの絶対に嫌だ!」
先生から刀の使い方は聞いている。とにかく刀を握れば属性は流し込める。先生の口ぶりから言えば間違いなくそうだ。
僕は覚悟を決め刀を構える。僕には才能があるんだ。
「おー戦う道を選んだんだね。立派だね。すごいね。尊敬するね。でも大丈夫。怖くて震えが止まらないでしょ。僕がすぐに楽にしてあげるから」
そう言って背中から鬼は棍棒を取り出し構えた。
「僕は二角鬼のジャレハ。鬼の集落の中だと結構強い方だと思うから降参は早めにね」
「うるさい、死ね!」
そう言って僕は全力で刀を握り震える足をなんとか抑え込みながら前に駆け出した。僕の刀はとても綺麗な紫色に光っている。




