16 固有スキルの力
「おいお前。確か名前は迅って言ったよな。俺がなんで今日お前を呼び出したかわかるか?」
学舎の現代でいう屋上のような場所に呼びだれて尋問を俺は受けている。人数は3人。タイガ、ノイダ、アラネと呼ばれていた気がする。
「悪いけど全くわからない。俺もまだこの場所にはきたばっかりなんだ。もし何か気分を害するようなことをしていたら謝る。」
「そうじゃねえ。てめえへの話ってのはよ......」
「てめえなんでシュカとあんなに仲良さそうなんだよふざけんな!」
お、おう......まさかそんなくだらない理由で俺は呼び出されたのか。俺はあまりのつまらなさに拍子抜けしてしまい驚いてしまった。ただ本人はいたって真剣そうだ。顔が赤くなっており自分でも恥ずかしいことを言っている自覚はあるらしい。
「それは悪かった。でもこっちとしてはそんな仲良いつもりはないんが」
「嘘をつくな! お前と話している時だけシュカはとても楽しそうだ! ふざけるなよ!」
「そうだそうだ!」
「私もそう思います」
ノイダとアラネはタイガの意見を後押しするかのように声を上げる。どうやらこのグループのリーダーはタイガらしい。多分だがこの2人はタイガの子分のような存在なのだろうか。
「それは多分俺とシュカが同じ属性で親近感を感じているからだと思う。ただそれだけだから......あと一緒に住んでるのもあるか?」
「な、なに! お前も火属性で一緒に住んでるだとー!チッキショー! お前みたいなパッとしない奴がなんで......」
ハッとした顔で3人が顔をしかめる。この感じだと火属性というのは結構あたりの部類なのだろうか。
俺は3人の反応を見て表には出さないが心の中で優越感を感じていた。
「火属性ってそんなにいい物なのか?」
「当たり前だろう! 鬼に対して一番有効なのが火だからな。だから火属性に適性があるやつはそれだけでこの村では優遇される。だからシュカはあの豪快な性格もあいまって人気なんだよ てか一緒に住んでるってなんだよ......」
なるほど。鬼の1番の弱点だからということで火属性というのはこの世界では価値が高いらしい。ありふれた属性だと内心バカにしていたがそれは自分の勘違いでかなり価値がある属性らしい。後一緒に住んでいると言った瞬間タイガの熱量が大幅に増加した。言わなければよかった。
「それに一番気に食わねえのはお前らの授業態度だ! 先生が真面目に話しているのにあの山田というやつは大体寝ているし佑とかいうやつは当てられても答えられない。それにお前も全くやる気が見えない。どうしてだ。どうしてこの場所にいながらそんなにやる気がないんだ」
タイガは頭を掻きむしりながらこちらを睨みつけてくる。先程までは冗談の範疇といった感じではあったが鬼の話になった途端3人ともの雰囲気が変わった。
「そう言われてもな......」
こちらもどう返事をしていいか困り頭を書いていると。神妙にタイガが語り出した。
「俺は妹を目の前で鬼に喰われた。それも俺に見せつけるかのように。俺は押入れの中に隠れてドンドン原型がなくなっていく妹を見ながら決めたよ。こいつらだけは絶対に殺し尽くしてやるって」
ノイダをそれに釣られるように話し出す。
「僕はお父さんがもういない。鬼にやられてしまったんだ。元々僕のお父さんはこの村では有名な鬼狩りだった。だけどある日全身傷だらけで帰ってきたんだ。じゃあ最後に僕に言ったよごめんって。その後すぐに死んじゃった」
アラネみ同じように自分の過去について話し始めた。
「私も鬼には恨みがある。私の好きだった隣家のお兄ちゃんが鬼に殺された。私の大好きなお兄ちゃんが......」
そう話した3人の目には涙が浮かんでいた。まだ飲み込みきれていない悲しい過去なんだろう。
「だから俺たちはお前たちのその態度が気に入らないんだよ」
「そう言われても......別に通いたくて通っているわけじゃないんだがな」
「な......なんだと、ここは選ばられた人間しか入れない学び舎だぞ。入りたくても入れないやつは大勢いる。それなのにお前は......」
タイガの顔が徐々に深く憎悪に染まっていくように見えた。まるで親の仇を見るような目だ。
この世界で何日か過ごしてわかった事がある。大半の人間は鬼のことになると別人のように豹変し攻撃的な性格になること。それもおかしなくらいに。
(ここは力の差を見せつけて解決する!......みたいな事ができたらいいんだがあいにくまだ戦い方をなにも教わっていないからな......)
そんな事を考えているうちにタイガの周りにはバチバチと雷のような火花が徐々に散り始めていた。
これはまさか......
「お前のようなやる気のないやつは俺が辞めさせてやる。ただもしお前が今この場所を辞めると言えば俺は攻撃しない。さあどうする?」
「......悪いけどそれはできない。俺もやらないといけない事があるからな」
恐怖で噛みそうになるのを必死に堪えながら俺は言ってやった! よし言えたぞ! これで少しは怯んでくれればいいんだが。
「そうか。じゃあ多少痛い目にあってもらうしかないな。俺の属性は雷。他の基本属性と比べても攻撃力が高い事で有名な属性だ。抵抗するなら止めはしないが、早めの降伏をお勧めするぜ」
「バチバチと雷の火花が散っていたタイガの周りオーラのようなものが徐々に右腕に収束していく。
「属性憑依。これは属性持ちなら誰でも使える初級魔法だ。お前もやれるもんならやってみろ。まあまだやり方を知らないお前には無理だろうがな」
なるほど。そのビリビリとなっているのは属性憑依というのか。俺はこの世界において知らなかった知識を知る事ができ、絶対絶命の状況でありながら感心をしていた。
「そんなことはや、やめよう。 この学校は先生の許可なくそういう事をするの禁止だって先生が言ってたことは覚えてるぞ」
俺はない頭を振り絞りビビりながらもタイガを必死に説得にかかる。
大量の電気を帯電した状態で殴られたら間違いなくただじゃすまない。感電することは避けられず、最悪の場合ショック死することもあるかもしれない。
俺は自らの命を守るために必死に言葉を搾り出し説得を続ける。
「そうだな。だがここは通常立ち入り禁止の屋上だ。先生たちも入ってこれない。だからお前がどんな目に遭おうと感知されないってことだ。いくぞ」
「お、おい! 辞めろって!」
雷を纏ったタイガの右手のパンチが容赦なく俺に当たりそうになる。危うく掠りかけたが間一髪避けて俺は後ろに下がり距離を取る。
「まだまだ! 俺はお前を認めない」
右手だけでなく左手も使って交互にパンチを使い分けながら攻撃を繰り返してくる。ただどれも紙一重のところで避けられている。......そんな俺はある疑問を抱いた。
「意外とパンチが見える......なぜだ?」
確かにばちばちとした雷のエネルギーが凝縮した手にぶつかればただじゃ済まないだろう。ただ攻撃のスピードが自分でもなんとか反応できるレベルだ。
俺はタイガが次から次へと繰り出される攻撃を回避しながら頭を働かせる。自分が今この状況で打てる最善手は一体なんなのだろうか。逃げる? いやそれはダメだ。入口の方にノイダとアラネが塞ぐように立っている。逃げるのは無理だ。
ならばもう......倒すしかない。
俺はふと昔前の記憶が2つ蘇った。アキュロスという女神が話していた内容だ。
1つ目は、俺たち異世界人は現地の人間よりもレベルが高いということ。
2つ目は、俺の固有スキルが『妄想者』という物だったということ。
この2つの記憶から導き出される最善の行動は......
(妄想するんだ。自分がこの状況でタイガに打ち勝つ状況を)
こいつは右でパンチをよく繰り出してくる。だから俺も右手で強烈な一撃を放って戦意を奪ってやるしかない!
「いい加減にしろ!!!」
俺は自分の右手に世界一強い力が宿っていることを妄想する。ボクシングの世界チャンピオンのパンチ。アニメや漫画の世界で出される強烈なパンチ。その他色々なシチュエーションをなるべく具体的に妄想しそれを右手に込めるように念じ俺は渾身のパンチをタイガに向けて放った。
すると自分の右手がその思いに呼応するように白く光りだした。自分が思い描いた強くなるイメージの量を増やすたびにその白はより輝きを増していった。
「な、なんだその力は...... う、ウワー!!!」
高速のストレートパンチが見事に腹に食い込み、ビリビリとまとっていた雷が解け気絶をしてしまった。
おいおいマジか。まさか一撃とは。やっぱり俺って強いのか?
そんな場ににつかわしくない能天気な事を考えながら俺とタイガの戦いは一撃で決着を迎えたのだった。




