15 交流をしよう。
「皆さん今日は新しい同士の方達が3人やってきてくれました。さあ、皆さん入って」
外見は20後半だろうか。若く生気に満ちた顔をしており非常に明るい印象をうけた。
「よ、よろしくお願いします!」
少し噛んでしまった......恥ずかしい。
見渡した限り教室の中にいるのは30人程度。俺たちがいた世界の学校の人数とあまり大差ないようだ。
「あああああ、あのよろしくお願いします!」
うん、俺よりもゆうちゃんの方が噛んでるな。先程感じた恥の感情はゆうちゃんの姿を見ることによってすぐに消えた。
「2人とも味気ない自己紹介でござるね...... 拙者は違うでござる。しっかりと自分がどういう人間か知ってもらうでふぉざるよ。よろしくでござるみんな! 拙者には嫌いな物がいっぱいあるでござる! バカ・アホ・無能 ほぼ意味は一緒だけどこの3つが嫌いでござる。だからそれらに該当する人は関わらないでほしいでござる! よろしくねでござる!イヒヒ」
相変わらずのわざとらしいござる口調で話し終えた山田の顔はとてもスッキリしている。ただ、周りの反応かというと時間が止まっているのかと思うほど固まっていた。
「だいぶ個性的な挨拶ではありましたが我々は鬼を絶滅させるために手を組んだ同士。どんな人間でも歓迎です。私の名前はロイド。3人ともよろしくね」
(どんな人間でもって......勘弁してくれ、また変な目で見られるのが確定しただろ......)
ここはシュカに言われて渋々きた現代でいう学校。この世界でいう学舎だ。この昔ながらの雰囲気である木でできた雰囲気や正座をした状態で受けるのが普通のこの場所は、おばあちゃんやおじいちゃんの家のような印象を受け、どこか懐かしく感じた。
ただ......
(おはよう)
(......)
山田と仲間だと思われた俺たちはこのクラス全員の人間から挨拶が返ってきていない。今までに一回もだ。やっぱりあの空気を凍結させた自己紹介は不味かったらしい。この世界の学校では友達をたくさん作れるかと思ったが甘かったらしい。
元の世界の嫌な記憶が蘇った俺は胸の奥の方がキュッとなるのだった。
てめえらおはよう! 今日もだりいよなー」
「おはようシュカさん!」
「おはようシュカ!俺もだるいよ〜」
クラス中の男女関係なく挨拶を返されているやつは真っ赤な髪が特徴的なシュカだ。失礼だが人望があったとは驚きだ。勝手に初対面の人間に切り掛かるやつは浮いているもんだと思っていたがそれは違ったらしい。
キーンコーンカーコン。
チャイムが鳴り響く。
「それでは今日の授業を始めます。今日も鬼についての考え方について皆さんと認識を共有し理解を深めていきますね。何度も聞くようですが皆さん鬼に対してどのようなイメージをお持ちですか?」
「悪いやつ!」
「僕らを餌だと思っている怖い生き物」
様々な答えが教室の各場所から上がりこの世界の鬼に対する認識が窺い知れる。
「皆さんの言ったことは全て間違いではありません。つまり鬼とは存在自体が悪。生きていることを許してはいけません。1匹も生きている鬼がいない状況を作り出すための屈強な戦士たちを作り出すことがこの学校の使命であります。ですから才能がある皆さんには鬼の存在を認識したらその場ですぐに殺せるような強い人間になってもらわなければ困ります」
凄まじい鬼への恨みを感じる。初対面の時はただの優しい先生だと思っていたが鬼のことになると顔が変わる切迫したものに豹変する。よっぽど過去に辛い事があったのだろうか。
「だから皆さんにはここで鬼を殺すためのあらゆる手段を勉強して強くなってもらいます。鬼を倒すための心構え。鬼を倒すための技。鬼を倒すための体を養ってもらいます」
そう。俺たちはこの先生の言う通り学校でこれらについて教わっている。ただ、ずっと座学で鬼に対する悪いイメージを教える......いや刷り込むと言った方が正しいだろう。ある種洗脳のような形でずっと意識だけを高めさせられる。正直退屈である。
もっと鬼たちをスパスパと倒せるような魔法であったり体術を教わってチヤホヤされたい。まあ口には出さないが。
キーンコーンカーコン
今日の終わりのチャイムが鳴り響く。
「さあ佑殿! 迅殿! 早くロゼフさんのところに帰るでござるよ! 今日は昨日取れた鹿肉で鍋をすると言っていたでござるからね。拙者はそれが楽しみなのでござるよ!」
「全く山田くんは食いしん坊だね。でも僕も楽しみ! 迅くんも楽しみだよね?」
「まあそうだな。いっつもはスープの中にちょっとした具が入ってるだけだし。早く帰って美味しい鍋を食べよう」
俺たちは1週間頑張ったご褒美という事でロゼフさんが作ってくれているであろう鹿鍋を早く食べたいがために3人で急いで家を目指す。ここでいう家とはロゼフさんの家のことだ。飯・住居・衣服など必要なことや物は全てロゼフさんにお世話になっている。正直お父さんと呼んでしまいそうになるぐらい俺は親近感を感じていた。
ロゼフさんへの感謝の
思いはそれは3人全員の共通認識である。ああ早く美味しい鍋が食べたい。
「おいちょっと待てよ」
山田とゆうちゃんと一緒に教室から抜けようとすると刺々しい声で呼び止められた。
「ちょっとついてこいよ。おめえに話がある」
「おー!迅殿友達ができたでござるね。おめでとう! 拙者たちは先に帰ってるでござるね。」
「......迅くんごめんね。 僕も鍋食べたいから先行くね!」
そう言って2人は行ってしまった。薄情者どもめ。
それになんで俺1人なんだ。もし呼び出すとしたら山田だけだろう。俺は正直目立ってないはずなんだが。
(まあでも行くしかないか)
俺はついにこうなったかとある種予想通りの展開に辟易しながらもついていくのだった。




