13 現実は厳しい
い、痛い。こいつら攻撃力自体はさして高くはないがちゃんとパワーはある。蹴られたところにはしっかりと衝撃がくるし噛まれたところも傷跡がついている。
「djdkdkslsぁぁっぁl!!!」
鬼たちが吠える。念願の獲物に出会え、その喜びを最大限表現するかのように。そして、そんな鬼たちから見たら獲物であるはずの俺たちはうん......悔しいが普通に獲物だ。めちゃくちゃ攻撃されてるし。
「おいお前らなんで戦わないんだよ! めちゃくちゃ攻撃されてるじゃねえか! 全く世話が焼ける!」
そう言った瞬間高速で移動しながら俺に絡みついていた鬼たちをシュカは持っていた剣で斬り伏せる。やっぱこの子普通に強いな。
シュカの攻撃により4対の鬼が消滅。やったと思うと同時に身体中についた鬼たちの涎とにおい。これがなかなかきつい。
「迅くんやばい助けて、めちゃ僕狙われてるんだけど! 早く! いって...... もうやだよー!! なんでこんなとこきっちゃったんだろぼく......おかあさーん助けて!」
情けないが、まあ仕方がない。ゆうちゃんは小柄で気の弱い子だ。自分1人じゃどうすることもできない事も無理はないし理解はできる。
「祐殿ー? 大丈夫でござるか〜?」
パン! ゴン! パキ! ズドン!
山田が鬼たちの節々の関節をリズミカルにへし折りながらゆうちゃんを助ける。
様々な音を立てながら佑ちゃんの周りにいた鬼たちは絶命していった。
「ありがとう山田くん......! 僕もうちょっとで死ぬとこだった。本当ありがとうマジで命の恩人だ。一生守ってください。ありがとうございますお願いします......」
心の底から搾り出すような声で山田に手を合わせゆうちゃんは感謝をしていた。
てか山田強すぎだろ。鬼相手にも全く怯まずに殴る蹴る折る投げるもう全ての攻撃をやってるじゃねえか。
「これが生き物の命を奪う感覚でござるか。もっと嫌悪感を抱くと思ったでござるが意外とそうでもなかったでござる。 拙者命を奪うの得意かもでござる!」
そう言って自ら鬼たちに接近し、現実世界で(山田いわく)地獄の教育によって身につけた体術をぶつける山田はとても生き生きしていた。
うん、怖いわ。生き物の命を奪ってる時に一番生き生きしてるって怖すぎ。俺は山田が鬼を倒してくれることに感謝する感情と同時にさらに山田に恐怖を抱いた。
「おー粗方片付いたっぽいな。てかお前ら本当に異世界人なんだよな!? 全然戦えてねえじゃん! なんでなの!? 前この世界に来てたやつらなんか三角鬼程度なら瞬殺してたぜ! そこのロン毛はむかつくがやっぱ強いな」
「まあまあシュカ殿そんなに怒ったら可愛い顔が台無しに..... やっぱり怒った顔も可愛いかもでござる」
「んだよてめえはうるせえな! 今真剣な話してんだよ!
まあでもこれならもう山からは引き返した方がいいかもな」
「そ、それだけはやめてほしいでござる!」
「俺もそれは勘弁だ。第一もしここでその一角鬼というのを倒さなかったら俺たちは元の世界に帰れないからな」
珍しく俺と山田の意見が一致した。ただ山田の動機は英雄になってモテまくりたいという真っ直ぐな欲望からくるものだろうが。
「いやだめだお前ら何にもわかってない。鬼たちの恐ろしさを。三角鬼はまだ脳が発達をしていないからこそ連携をとってくることはない。だがもし二角鬼以上のやつが出てきた場合間違いなく連携を取られる。そして、1人ずつ確実に堅実に殺されるだろうな」
「で、でも僕たちその鬼を退治しないと帰れないんだって! だから無理でもなんでもやるしかないんだよ」
「もちろん近づくなとは言ってない。お前たちにはまずは戦い方を学んでもらおうと思ってな。」
学ぶ? ということはロゼフさんと何かしらの一緒に鍛えるという流れか。異世界での固有スキルそして自分の属性。この2つがあれば余裕でいけると思っていたがそんなことはなかった。
俺はこの世界の厳しさを改めて実感した。
「だからお前ら、私と一緒に学校にこい!」
「えええ! が、学校!? またこの世界でも行かないとだめなのー!?」
佑ちゃんの絶叫が広々とした山にこだました。うん、俺も佑ちゃんが先に叫んでくれなかったら叫んでいたところだ。
俺は学校にいく面倒くささから、さらに気が重くなる。
現実世界のようなことにならなければいいが......
「オーマ様! ご報告があります! 先程異世界人の一向とかち合った三角鬼が全滅したとの報告が上がっております!」
いきなり俺の書斎の入り口のドアを開け放った部下の顔は緊迫感で満ちていた。
「ふん。まあ流石にそうか三角鬼程度に抑えられるわけはないと思っていたが......俺も挨拶ぐらいはしてやるか。
拳を握りしめ力を入れる問題ない。こんだけ動けば間違いなくあいつらを戦闘不能にできるはずだ。
「そいつらは今どこにいる?」
「報告によれば、山を降りて行ったようです!」
「......なぜだ?」
オーマは異世界人たちの行動に驚くとともに自分が理解できない不可解な行動に困惑するのだった。




