12 魔力の色
暑すぎる。
俺たちが今歩いているのはロゼフさんたちが言っていていた鬼がいるという山。どんな恐ろしい山なのかと思えば意外と普通の山だ。木々が生い茂り綺麗な花や小さな虫などが所々飛んでいる。日本でもよくある山だ。
「シュカ殿。なんか遠くないでござるか。ロゼフさんの言い方だとほんの10分でつきそうなニュアンスだったでござるよ。」
「うるせえよお前。私は私をコケにしたお前を許さない。でも私は異世界から来た人間を案内する役割がある。だから仕方なくやっているんだ。だからウダウダ言わずに真っ直ぐ歩け」
ドンっ!
「痛いでござる! なんで蹴るんでござるかシュカ殿! まあこれはこれで可愛い女の子にお尻を蹴ってもらえるというなかなかできない貴重な経験が......」
「おい、殺すぞ?」
シュカが今にも山田に襲いかかりそうなぐらいのさっきを放って威嚇する。怖い怖い。まだほんの数十分しか時を共にしていないのにえらい嫌われようだな山田。お前は何か人を怒らせる何かがあるのか。
「それにしても遠いよね迅くん。僕もう脚が痛いよ。それに暑さで喉がカラカラだ。水とかないのかなー。その辺にある水辺は濁ってて飲むの怖いし。もうやだなー」
佑ちゃんのテンションが露骨に下がる。まあ気持ちはわかる。山を目指してからかれこれ2時間以上は歩いているからだ。疲れるのも無理はない。佑ちゃんのぼやきを聞いた俺もなんだが疲れがうつり疲労を感じてきた。
「なんだよお前ら元気ねえな。分かったじゃあお前らに面白いもの見せてやるよホラ」
そう言ってシュカは手で握れるサイズの石のようなものを自分のポケットから取り出し俺たちに渡した。
「これは魔力選定石っていう石だ。全力で握ってみろ。そしたら色が変わる。そしてその色がお前たちの適性がある魔法の属性の色に変化するんだ。やってみろ」
なるほど。これはラノベでたまに見る適性検査だ。俺が普段よく読むやつだとこの世界では珍しい属性を手に入れて、周りに驚かれる。そしてそこから大活躍をしていくというのが鉄板の流れだ。さあどうなる。
フンっ!
握り込んだ石は神々しい赤色の光を放った。燃えるような赤で太陽をそのまま圧縮したのではないかと思うほど綺麗で情熱的な赤色に変貌した。ということは......
「おーやったじゃん! 私と一緒の火属性! 嬉しいね〜あんたのこと全然気にしてなかったけど同じ属性なら別! よろしくね!」
「お、おう......」
どうやら俺は認識すらほとんどされいなかったらしい。2時間以上も一緒にいて存在感がないとはどんだけなんだ。
てか火属性って。めっちゃ王道じゃねえか。なんかその辺のやつでも手に入れることができそう。 まあ仕方がない。
「迅殿は火属性か! 本人と一緒で面白みのない属性でござるね! イヒヒ」
「うるせえ。お前はなんなんだ? 」
山田の顔が良くぞ聞いてくれましたと言わんばかりの満面の笑みに変化した。こいつ絶対当たりじゃねえか。
「拙者は錆属性らしいでござる! ほらこの石見てでござるー!」
視線を山田が持っている石に向けるとみるからに錆ており、どんどんと原型が崩れていた。
「おいてめえ、何やってんだよ貴重な石を! ふざけんな」
「ごめんでござる! 拙者が守ってあげるから許して欲しいでござる〜!」
山田はそう言って追いかけてくるシュカから走って逃げる。
おい、そんなことしてると危ないぞ。
「てかシュカさんに聞きたいんだけど、鬼ってほんとにこの山にいるの? もう僕たちだいぶ歩いたよ。もし嘘だったらどうしよ、嘘だと言いいけど嘘じゃ嘘じゃありませんように」
訳のわからないことを言いつつお祈りをする仕草をした佑ちゃんに対してシュカは淡々と伝えた。
「ああ、まあ心配すんなホラ見ろ」
目の前にいる鬼の存在を
「hぢいdそおっsっぁmskっsっlsl!!!!!」
この世の悲劇に声帯を取り付け叫び声を上げさせたのかと思うほど、耳触りで不快な声がとてつもなくでかい声で響いた。気づいていないだけでこんなにいたのか。目に見えるだけでも20体。なぜかみんな角が3本のやつばかりだ。どいつもこいつも涎を垂らしながら、こちらを睨み、徐々に距離を詰めてくる。
「来たでござるよ2人とも! ここから拙者たちの英雄物語が始まるのでござるよー!」
山田がそう意気込んだ瞬間鬼たちの群れに突っ込んだ。
勇敢というか無鉄砲というかやっぱ山田はすごい。
山田に負けていられないと思った俺も鬼の方角を向き走り出す。全てはクソだった現実世界の思い出を異世界でのいい思い出に塗り替えるために!
「あ、そういえば」
「拙者たち」
「僕たち」
「俺たち」
「どうやって戦うんだ?」
鬱屈とした現実世界から抜け出しヒーローになりたいと思う気持ちが強かった俺たちは何も考えずに飛び出してしまった。大丈夫か......




