11 王様
人間が美味しいか美味しくないか。そんなことは俺たちには関係ない。ただ生きるために人間を食うだけだ。
「人間を三角鬼の連中が仕留めてきました。お納めください」
配下である二角鬼が進言する。
ここは山の中にある鬼の集落であり優れた鬼の種である一角鬼の1人が管理している場所である。
ガブリ。
筋肉が詰まっており歯応えのある足にまずかぶりつく。大量の血が口の中に溢れ骨を噛み砕く音が響きさらに食欲をそそられる。そこから俺はもう一方の足と手、鬼の集団の中で言われている人気な場所、つまり美味しい部分を全て食べた。
そして最後に脳だ。下々の鬼では食べたことすらないであろう脳は噛むたびに旨味が溢れ、細胞が活性化していくのを感じる。
「とても美味しかったぞ。だが少々普通の人間を口にするのは飽きた。もう少し肉体に魔力が詰まった人間を私の前に持ってこい」
「で、ですが! 村の方はロゼフのやつが指揮を取っており中々狩りが上手くいかず......」
そう言い切る前に二角鬼の誰だか名前は忘れたが手で撫でるように触り弾き飛ばした。上方向に弾くと今俺がいる家を貫通し、穴が開くほど吹っ飛んだ。
加減を間違えたようだ。
ただ俺に逆らうやつは死んでも仕方がないと思っている。鬼の世界は弱肉強食。特に鬼の世界はその傾向が強い。弱いやつは虐げられて強いやつはいい思いができる。そのことに疑問を感じる奴はいない。もしいてもこの集落の中では意見を通すことはできないだろう。
ここは山の中に拠点を抱える鬼の集落だ。普段は大量の木を使い姿を隠す集落でもある。三角鬼を始め、二角鬼などの様々なツノの本数を持っている鬼が生息している。そしてその集落のリーダーとして君臨しているのがこの俺オウハである。
「オウハ様。先程報告があった通り異世界人がきたようです。我々が確認することができたのは3人。全員男でございました」
流暢に俺に意見を述べる鬼は二角鬼のオルネである。鬼の中では珍しい女タイプのやつだ。こいつは俺がどれだけ理不尽な理由で部下を殺そうとも何も言わない。できる部下だ。何かあったとしてもこいつだけは生かしておいてもいいと考えている。
「3人か。数が少ないが仕方がない。お前たち、必ずその3人を私の元に連れて来い。生死は問わん。必ず俺の胃袋に収めるために死力尽くし捉えてくるのだ」
「ぢいおwlそどおどそそsksjsjsjsj!!!」
三角鬼のとても大きな雄叫びが広場にこだまする。
やかましい奴らだ。こいつらは人間の脳を食べたことがない。だからこそ言語習得をしておらず、知能も低い。ただ、こいつらの頭の中にあることは2つ。人を食べたい。強いものに従いたい。
弱者ならではの行動原理に反吐が出る。
だが、弱い生き物はそれを受け入れ、自分を押し殺し生きていくことは当然だ。ただそれは自分が弱いからこそ生まれている悲しい現実。憎むなら環境ではなく自分だ。もっと己の弱さを憎むんだそして強くなれ。
その時が来たらどうにもならない現実に苦しみながら死ねばいい。
「早速三角鬼。お前たちは全員で3人の異世界人を捉えに行け。」
「そして、二角鬼。貴様らはこの村の警備にあたれ。恐らく奴らはこの村の中に入るつもりだ。武器を準備しいつでも討てる準備をしろ。殺すなよ。鮮度が落ちる。」
「おおおお!!!」
二角鬼は拙い言葉を話せるやつもいれば流暢な言葉で話すやつもいる。個体差はあるが三角鬼よりはマシだ。
「それと一つ行っておく。もし1人も私の胃袋に収められなかった場合お前たちのグループ1つを全滅させる」
そういうと角の数関係なく鬼たちはどよめき始めた。
そんな時はいい方法がある。
ガチり。
棍棒を握りしめた俺は地面を思いっきり叩く。すると徐々に振動が始まり山全体に地響きが響きわたる。
「俺はオウハだ。この集落の王だ。お前らも俺の力はわかってるな? だから、逃げたらどうなるか......わかるよな?」
「じぇいえおえおえおえおどいづxk!!」
「さっさと行け!」
その言葉を聞いた瞬間三角鬼は異世界人がいるであろう方角目がけ、勢いよく走り出した。
今回は何人同胞が帰ってくるか分からない。ただ前に相対した異世界人よりは頭が悪そうだ。まだ来たばかりでこちらに攻撃を仕掛けに来るとは。そこは運が良かったと思っている。
せいぜい待ってろよクソ人間。
必ずお前たちを食って俺の栄養にしてやる。
怒りを我慢することができず壁に棍棒を叩きつけ笑顔を浮かべた赤鬼の王はまだ見ぬ異世界人たちを必ず殺す事を決意した。




