ハッピーエンドへの期待は
レビュー執筆日:2022/5/3
●飽きの来ない構成で、ポップミュージックの良い部分を凝縮したような一作。
【収録曲】
1.ハッピーエンドへの期待は
2.生きるをする
3.八月の陽炎
4.好きだった(はずだった)
5.メレンゲ
6.はしりがき
7.キスをしよう
8.トマソン
9.裸の旅人
10.TONTTU
11.ワルツのレター
12.なんでもないよ、
13.僕らが強く。
14.mother
マカロニえんぴつのメジャー初となるフルアルバム。「全14曲で1時間弱、ハイテンポな楽曲や弾き語りの楽曲を交えつつ、ミドルテンポのメロディアスなナンバーを軸とした構成」といった点は前作のフルアルバム『hope』と共通していますが、軽快な雰囲気でありながら途中でレゲエ調になる『トマソン』やどことなく乾いたサウンドが印象的な『なんでもないよ、』のように「新しさ」を感じさせる曲もあり、『hope』から程良い感じの変化を遂げた作品のように感じられました。間に『愛を知らずに魔法は使えない』というやや実験色の強いEPをリリースしたので、その影響もあるのかもしれません。
全体的にポップな作風でありながら、単なるBGMとして片付けられないような「引っ掛かり」を数多く残すような作風は良い意味で相変わらず。しっかりとフックを利かせたメロディは聞いていて心地良いですし、リズムチェンジのタイミングやギター・キーボードの音色の差し込み方が絶妙な曲も少なくありません。歌詞の面でも「また僕を好きになりたい 生まれ変わったりする以外で」(メレンゲ)や「足りないものばかりの僕らなら 何度も出会えるからね」(僕らが強く。)のように印象的なものが数多く見られますし、サウナの熱気をハードロックで表現した『TONTTU』のようなコミカル路線の楽曲も前作に引き続き収録されています。こういった様々な要素が上手く絡み合って飽きの来ない構成になっていると言えるでしょう。
「群を抜いて凄い曲が収録されている」といった印象は受けませんでしたが、一曲一曲のクオリティが非常に高く、それによって見事なまでに「傑作」に仕上がっているように感じられる一作。「分かりやすくも決して陳腐ではなく、小難しくならない程度に凝っていて、聴いていて良い気分になれる」というポップミュージックの良い部分を凝縮したようなアルバムでした。
評価:★★★★★