愛を知らずに魔法は使えない
レビュー執筆日:2021/8/10
●広がったバリエーションと良い意味での「引っ掛かり」で楽しめる一作。
【収録曲】
1.生きるをする
2.ノンシュガー
3.溶けない
4.カーペット夜想曲
5.ルート16
6.mother
マカロニえんぴつの6曲入りのEP。今作でメジャーデビューしたこともあってか、BPM200を超えるテンポで進める『生きるをする』やダンサブルに歌謡曲的なメロディを聴かせる『ノンシュガー』、軽快なピアノの音色が印象的なソウルナンバーの『ルート16』やどっしりとしたロックチューンの『mother』と、曲のバリエーションが一気に広がったように感じられます。曲数は少なめですが、曲調の幅で言ったら前作のフルアルバム『hope』よりも広いかもしれません。
また、ただ単に曲調の幅が広いだけではなく、前作同様、むしろ前作以上に「ここでこう来るの?」と思わせるような良い意味での「引っ掛かり」が随所に配置されているのも面白く感じられます。先程挙げた『生きるをする』では途中で急にテンポが遅くなるのがユニークですし、『溶けない』では途中でテンポが変わる……どころか急に曲調がファンキーな感じに変わるのがこれまたユニーク。『カーペット夜想曲』では曲を追うごとにボーカルやサウンドの雰囲気が次々と変わっていく点が興味深く、細かいことを考えずにひたすら盛り上がれる楽曲になっているのではないでしょうか。また、ボーカル・はっとりの独特な抑揚の付けた歌い方もより強調されている印象があり、そういう点でもある種の「引っ掛かり」をリスナーに残しているように思えます。
瞬間的なインパクトのあるフレーズはそこまで多いわけではないものの、様々な「引っ掛かり」を重ねることにより、一曲通して聴いて「楽しかった」と振り返れる楽曲群が収録されたEP。少ない曲数で充分に彼らの魅力を堪能できた一作でした。
評価:★★★★★