エディオン視点 後編 俺、溺愛しちまうかもしれない
ああ〜〜〜!!
ヴェルカズすまねぇ! 俺、今だけはこのお嬢ちゃん以外の事を考えてる余裕がねぇ!!
ヴィオレ魔導王国の軍師にあるまじき失態なのは分かっちゃいるが、いるんだが……!!
「おっ、おいち〜〜〜!」
もっきゅもっきゅとパンケーキを頬張りながら、瞳をキラッキラに輝かせているルカが! あんまりにも尊いモンだから!!
今だけで良い! この幸せ空間でルカと同じ空気を吸えてる喜びに、少しでも浸らせてくれ〜〜ッッ!!
*
鎖骨の辺りまで伸びた、子供特有の柔らかな金髪。
髪と同じ色のまつ毛で縁取られた、空色の瞳。
そして、少女の持つ力を暗示する古めかしい衣服の意匠が、その子供が天使の力を持った存在である事を俺に認識させる。
さて、そろそろ正気を取り戻せた。
……正気だよな? 俺。
まさかとは思うが、あの年齢で魅了魔法なんてヤバいモンを使えるとか言わねぇよな? なぁ??
朝食ついでに、しばらくお嬢ちゃん──ルカと接してみて、分かったことを整理していく。
ルカには目立った怪我も無く、親を求めて泣き喚くような様子も見られなかった。
怪我をしていないなら誰かに守ってもらっていたのかと思ったが、保護者が居たならソイツを探してくれと頼んでくるのが筋だろう。しかし、それが無い。
やはりルカは、何らかの理由で孤立した子供である可能性が高い。
更には、ルカはここがヴィオレ魔導王国である事を知らなかった。
俺が魔族で、それも人狼と悪魔のハーフだと打ち明けてみても、少しも怖がる様子が無い。挙げ句の果てには、俺をワンコ呼ばわりときたモンだ。心臓に毛でも生えてんのか? 普通は怖がるモンだぜ、普通はな。
魔王ヴェルカズについても知っている素振りは無い……というか、魔界についての知識はほとんど無いんだろうな。下手したら魔法の知識も無いんじゃねぇか?
……若干先が思いやられるが、怖がられてさえいないのなら、いくらでもやりようはあるか。立派に育つまでの時間は、まだまだあるんだからよ。
「……俺様、やっぱ良い拾い物をしたなぁ」
「エディしゃん、今何かいいまちた?」
「いいや、こっちの話だ。さあ、この階段を登ったらもうすぐだぜ」
「あーい!」
エディしゃんと呼ばれる度に心が浮き足立ってしゃーないものの、ルカをヴィオレ魔導王国軍の一員として受け入れるには、ヴェルカズへの目通りが必要になる。
まあ、ヴェルカズは気難しい奴ではあるが、ルカは何かと聡い子だ。
子供の世話には参加しないだろうが、もしもルカが魔法や薬の研究に興味があるのなら、そのうちヴェルカズと二人で研究室に入り浸る日も来るのかもしれねぇな。
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