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天使すぎる転生幼女は魔族を平和に導きたい!  作者: 由岐
第8章 私と彼の理想の魔王像
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束の間の休息は終わりを告げて(ヴェルカズ視点)

「おーいぃ……ヴェルカズぅぅ……生きてるかぁ〜……?」

「そう簡単に……死んでたまるか……」


 ルカとの相部屋を優勝商品として競った早食い対決に敗れた私とエディオンは、子供らの世話をムウゼとティズに託した。

 結果として私はエディオンと相部屋という事にしたのだが、普段からそこまで早食いというものをしないうえに、甘味を食べなければならなかった事もあり……体調はあまり優れない状態である。

 エディオンはベッドの上で寝転がり、四肢を投げ出して放心状態に近い。かくいう私も、ソファの背もたれに体重を預けて胃を休ませていた。


 おかしい……。

 私の計画では、この旅行で更にルカとの距離を縮め、義理とはいえもう少し親子らしい時間を過ごす予定だったはずなのだが……。

 これがかき氷の早食いではなく、何かしら辛味の強い料理の早食いであれば、このヴェルカズが圧勝していたであろうに……!


「はぁ〜……。俺様、若い頃は甘いモンなんてもっとペロリといけてたはずだったんだがなぁ〜……」

「フッ……。私も貴様も、それだけ老いたという事であろうよ」

「そりゃまあ、俺様達とナザンタを比較したら全然老けてるとは思うけどよォ……。嫌だねぇ……歳は取りたくねぇモンだぜ」

「それでも、無情に時は過ぎていくものだ。……次世代の育成にも、更に力を入れていかねばなるまいな」

「……だな」


 次世代──つまりは、私が魔族大陸を統一した後、次のヴィオレ魔導王国の魔王となる者と、王を支える者達。

 中でもこのエディオンが拾って来たルカは、類稀な光属性の膨大な魔力と、それをあの幼さでコントロールする術を身に付け始めている才能がある。

 最初にあの娘を目の当たりにした際には、物好きなエディオンが天使の女との間に迂闊に孕ませてしまった隠し子かと勘違いしたものだったが……。


「……ルカは、私の後継だ。その生まれが何であろうと、彼奴がこの私の娘であると認めたのだ」

「ああ……。俺らの大切なプリンセスだ。今は色んなものに触れさせて、お前さんの後を継いでも問題無いぐらいに立派な魔王として育てていかねぇと──」


 カリカリ……カリカリ……。


 エディオンが途中で言葉を止めたかと思うと、扉の方から何やら硬い物が擦れるような音がした。

 加えて「キャウンッ!」という甲高い鳴き声が聞こえ、エディオンが俊敏な動きでベッドから飛び出す。


「オイ、ルカがヤベェってどういうこった!?」

「何だと……!?」


 勢い良く扉を開け放ったエディオン。

 すると、すぐさま黒妖犬のシィダが部屋に飛び込んで来た。

 エディオンは炎の悪魔と雪人狼のハーフであり、犬や狼に連なる生物の言葉を理解する耳を持っている。

 シィダがナザンタやエウラリーシュ達ではなく、わざわざその言葉を聞き取れるエディオンを訪ねて来たという事は……。


「……エディオン、シィダは何と?」

「……ルカ達が、高波に呑まれて攫われた……らしい」

「それは……」


 ここにムウゼもティズも報告に来ていないのだから、二人はルカとエドの側に居る可能性がある。

 何らかの原因で激しい高波が発生し、子供らを連れて逃げる時間も無かったのだろう。

 しかし、ムウゼかティズのどちらか……ムウゼの確率が高いだろうが、シィダにこの事を伝えるよう頼んだ……と。


「ムウゼ達がルカとエドと一緒なら、一応無事ではあるんだろうけどよ……早く探しに行かねぇと! この辺の潮の流れを船乗りにでも聞いて──」

「ルカ達の居場所であれば、恐らく探知は可能なはずだ」

「ほ、ホントか!?」

「元は迷子防止策として用意しておいたものだったのだが……ルカとエドゥラリーズに贈った、あの顎紐(あごひも)付きの麦わら帽子。あれに使った紫と赤のリボンには、私の血液から精製した魔力を編み込んである。その魔力を手繰っていけば……」


 もしもルカとエドゥラリーズがはぐれていたとしても、それぞれのリボンに込められている私の魔力を辿れば、必ず見付けられるはずなのだ。

 まさか、迷子ではなく行方不明になるとは想定していなかったが……。


「確か、ナザンタとエウラリーシュは土産の下見に出ていたな。……暫し待て」


 部屋に備え付けられていた用紙にメモ書きをし、ルカ達が行方不明になった旨を二人に伝えるよう、シィダにメモを託す。


「これをナザンタかエウラリーシュに渡し、二人を連れて私の魔力を辿るのだ。黒妖犬である貴様であれば、それは可能なはず。私よりも小規模な魔力の反応を追えば、主人を見付けられるであろう。……出来るな?」

「キュウ!」

「任せとけってよ」

「それで良い。さあ、疾く行くがよい」

「キュッ、キャウンッ!」


 私のメモをしっかりと口に加えたまま、颯爽と駆けていく小さな黒。


「……魔力探知は久方振りだが、己の魔力であれば探るのは容易い」

「問題は、高波の原因が何なのかって事だよな」

「ああ……」


 そう。ルカ達を捜す事のみならば容易なのだ。

 一番の問題は、あの子らが流された先が安全であるかどうか。


 スカレティアでの誘拐事件や、天使襲撃の一件もあり、ここ最近の魔族大陸はいつにも増してきな臭いものがある。

 これも、ルカをはじめとする天使関連のトラブルである気がしてならなかった。

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