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天使すぎる転生幼女は魔族を平和に導きたい!  作者: 由岐
第6章 動き出す世界
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ここから逃げ出すには

「ちょ、ちょっと待って下しゃい! 婚約者ってどういう事れすか!?」

「……? 大きくなったら、いつか結婚する相手の事ですよ?」

「そういう意味じゃなくてでしゅね……!」


 エドと名乗った少年は、私の問いに不思議そうに首を傾げる。

 それに、今この子が言った『父上』っていうのが諸悪の根源なのでは……?

 次にいつこの扉が開かれるか分からないし、出来るだけこの男の子から情報を入手しないとまずい気がする。それに、向こうはこっちに対して警戒心も無いみたいだしね。


「……ええと、質問(しちゅもん)しても良いれすか?」

「ボクに答えられる事なら、何でも聞いて下さい!」

「わたちとエドしゃんの婚約を決めたっていう父上って、何をしてる人なんでしゅか?」

「この国の魔王様です! だからルカは、ボクが王位を継いだら王妃様になるんですよ?」


 魔王様と来ましたか……!

 やっぱり私の予想通り、お父様の不利に働くような目的で私を誘拐させたんだろうな……。

 となると、この子は敵国の王子様って事になるのね。本人には全く悪気が無さそうなあたり、その『父上』とやらの教育方針はろくでもない予感しかしないわ。


 続いて、私は更にエドさんに対して質問をしていく。


「……この国について、色々と教えてくれましぇんか?」


 私がそう言うと、エドさんは目を輝かせた。


「ボクとの将来の為に、今から勉強していこうとしてくれてるんですね! 流石は父上が選んだ婚約者……立派ですよ、ルカ! それにボク達はもう赤の他人じゃないんですから、エドって呼び捨てにして下さい。その方が距離が近くて、もっと早くルカと仲良くなれそうですから!」

「あ、あい……」


 ……親の教育が行き届いてるなぁ。悪い意味で。

 普通さ、婚約者って両家がそれぞれ話し合ったうえで決めるものでしょ? いや、藤沢流歌時代に婚約なんてした事ないから想像でしかないんだけどさ。

 それなのにこの子が言う婚約関係って、エドさん……エドの父親が一方的に決めた事でしかないじゃない? でもこの子は、そんな事に何の違和感も抱いてないんだよ。

 父親の言う事が絶対……そういう風に育てられてきたんだろうな、きっと。


 静かにドン引く私とは対照的に、エドは自分の国に興味を持ってもらって嬉しいのか、にこやかに説明してくれる。


「父上が治めるこのスカレティア連合王国は、大陸の南側にある中規模の国なんです。主な産業は鉱山資源や武器の輸出でしたが、近年では近隣の小さな国々を吸収して、それ以外の産業にも手を出し始めたところです」

「大陸の南側……」


 ……って言われても、全然分からん!!

 そういえば私、自分が暮らしてる国の場所すらよく知らなかったんじゃん! 誰かに教えられたような気もするけど、全く知らない世界の地理なんてそう簡単に馴染む訳がないのよ……!

 ……こうなったら、もっと踏み込んだ質問をするしかない!


「えっと……国境が接している国はどこなんでしゅ?」

「大陸の東側にあるブレウォートと、西側のヴィオレですね。そういえば、ルカはヴィオレの王女なんですよね?」


 ヴィオレと国境が隣接してる!?

 良かった……これなら自力で王宮に帰れるかもしれない!


 しかし、そんな私の期待はあっさりと裏切られる事になる。


「確か、ヴィオレの王都からここまではかなり遠かったはずですが……転移魔法が使える人が居て助かりましたね」

「えっ……遠いん、でしゅか……?」

「ええ、元々はスカレティアは大陸最南端の小さな国でしたからね。なので、王城のあるここからだと魔馬車を使ってもかなり時間が掛かるんじゃないかと思いますよ?」


 魔馬車って、前にムウゼさんとナザンタさんと一緒に乗ったアレだよね。空を駆ける、物凄く速い魔界の馬。

 あれですら時間が掛かる程の距離となると、一般幼女が徒歩で帰れるような距離じゃない。それに、魔馬車なんて自分じゃ扱いきれないし……。


 ……もしかして、脱出は絶望的だったりする?


 ……でも待ってよ。さっきエドが言ってた転移魔法って?

 よくあるイメージで想像するなら、物凄い莫大な魔力を使う代わりに、好きな場所に物や人を飛ばせる魔法だよね? ゲームで例えるなら、オープンワールド系にあるファストトラベルみたいなやつ。


 お父様が言うには、私って魔力の量が凄いらしいんだよ。それならコツさえ掴めれば、自力でヴィオレの王宮まで転移して帰れたりするんじゃないの!?


 私は脱出計画を悟らせないように、平凡な幼女を装ってエドに訪ねる。


「魔馬車でもそんなに時間が掛かるなら、急用でどうしても早く遠くに行きたい時は大変そうでしゅね〜?」

「そういう時こそ、転移魔法が使えると便利なんですよ! ……とは言っても、色々と条件があって、誰にでも簡単に使える魔法じゃないらしいんですけどね」

「そうなんでしゅか?」

「転移魔法は必要な魔力量が桁違いなので、並みの魔族にはまず使えません。それに、いざ飛べたとしても、転移先に強力な結界が張ってあったら弾かれちゃうんですよ」


 うーん、それはそうか……。

 誰でも簡単に転移出来たら、戦時中に暗殺し放題になっちゃうもんね。となると、王宮にも当然その結界は張ってあるはず……。


 ……え? でも私、転移魔法で連れて来られたんでしょ?

 あの冷静沈着で魔法に詳しいお父様が、安全対策を怠っていたとは考え難いし……。なのに、結果的に私はここに誘拐されてきた訳で……?


「うーん……」

「どうしたんです?」

「いや、そのれすね……? どうしても結界の中に入りたかった場合、どうやったら転移出来るのかなぁって思って……」

「ああ、確かに……! 凄いですね、ルカ。ボクなら無理なものは無理って諦めちゃうところなのに、チャレンジ精神が豊富なんですね!」

「あ、あいがとーごじゃいましゅ」


 何故だか分からないけど、婚約者(仮)の全肯定具合がヤバいです。

 君が褒めてくれてるそのチャレンジ精神だって、スカレティア連合王国からの脱出に向けた熱意なんですけどね……!


「それじゃあ、後で詳しそうな人を呼んできてあげますね!」

「いや、出来れば今しゅぐにでも──」


 ぐうぅぅぅ〜。


「ふふっ……話の続きは、食事を済ませてからにしましょうね」

「あうぅ〜……。そ、そうさせてもらいましゅ……」


 そういえば私、お昼ご飯もまだだったんだ……。

 エドに「一緒に食べましょう」と誘われるがまま、ひとまず私は腹の虫を落ち着かせる事に専念するのだった。



 ちなみに、万が一毒でも盛られていたら怖いから、エドが先に口を付けるのを待ったのだけれど……特にそんな事も無かった。

 スカレティアの魔王は、本気で私をエドの婚約者にしたいだけなのかな……?

広告下↓↓の☆☆☆☆☆のところから、 1〜5段階で評価出来ます。

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