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何でもない、何でもなくないこと

 私が正式に魔王様の娘──つまりは次期魔王として発表された後、そりゃもうとんでもない騒ぎになりました……!


 エディさんは事前に魔王様から聞かされていたみたいだから驚いてなかったようだけれど、それ以外の皆からの質問責めやらお祝いの言葉やら、もう凄いの何のって……!!


 せっかく今日は冬祭りで美味しい料理やデザートが沢山食べられると思ってたのに、ムウゼさんは放心状態だし、ナザンタさんは「何で!? どうしてルカちゃんがヴェルカズ様の娘になる流れになってるの!?」と混乱してるし、リーシュさんもちょっと様子がおかしいみたいだし……。


 近衛騎士団の人達はよく顔を合わせているから、皆から「おめでとうございます、姫様!」なんて言われちゃったり。

 そっかー、私ってお姫様になっちゃうワケかぁ……。

 ぷ、プレッシャーが凄いなぁ……。ていうか、こんなド庶民が魔界のお姫様になるだなんて、この先やっていけるかな、私!?


 元々、賑やかなお祭りになるとは聞いていたけどさ!

 私と魔王様の事が話題の中心になって、王宮の色んな人からお祝いされまくるなんて想定外にも程があるじゃないですか!!


 それに、魔王様……今となっては、ヴェルカズお父様と呼ぶべきなのかな……?

 私とお揃いのスミレ色のリボンで髪を纏めて、超絶イケメン悪役ヅラで口元に笑みを浮かべているお父様が、私を静かに見守っているのです……!

 確かに魔王様が私の保護者になってくれるのはありがたいけど、ついさっきまでただの魔王軍配下のしたっぱだった私としては、急な身分のランクアップに戸惑うしかないんですよ!


 ああ……せっかくナザンタさんが私用にお酒が入ってないパネトーネを作ってくれたっていうのに、いまいち味が分からない……!

 もっさもっさとパネトーネを口に運ぶ私は、これまた緊張やら混乱やらで鈍った味覚のまま、ミルクを飲み込むのだった。




 *




 夜も深まってきた頃、そろそろ眠気が強くなってきた。

 その頃にはもう、次期魔王の件で持ち切りだった人々も、それぞれ別の話題に花を咲かせているようだった。


「ん……ルカ、眠いのか?」


 そう私に声を掛けてきたのは、ワインを片手にエディさんと話していた魔王様だった。


「あい……。今日は、ちょっぴり疲れまちた……」

「そりゃあそうだろうよ。次期魔王様のお披露目パーティーみたいなモンだったからなぁ。色んな奴らと話して、ルカなりに気ぃ遣ってたんだろ?」

「……エディオンの言う通り、ルカは聡い子だ。子供なりに、相手に失礼の無いように立ち回っておった」


 あ……もしかして私、魔王様に褒められてる?

 いやー、これでも私、中身は大人ですからね……!

 身体はお子ちゃまだから、もう眠くて眠くて仕方がないんですけど……。それでも、褒められるとちょっと嬉しい自分も居たりして。


「魔王しゃま……わたち、今日はもうお風呂に入って、寝ちゃってもいいれすかぁ……?」


 けれども私がそう言うと、魔王様はこう言い返してきた。


「……魔王様ではない。今日から私の事は、父として敬うが良い」

「ちち……おとーしゃま……?」

「ンッッッ!!」

「……そうだ、それで良い」


 何故だかエディさんが激しい咳払いをしているのが気になるけれど、今はとにかくさっさとお風呂に入って、ベッドに潜りたい……!


「……エディオンよ、ルカを風呂に入れてやれ」

「あー、それなら侍女に頼んでくるぜ。俺やムウゼが風呂に入れようとすると、恥ずかしがって嫌がるんだよなぁ」

「ふむ……その齢で恥じらいがあるとはな。精神的な成長が早いのか?」


 そりゃあ、中身は成人女性ですのでね……!

 いくら今の身体がむちむちの幼女でも、男の人に裸を見られるのは無理すぎるもん。恥ずかしすぎて、身体を洗うどころじゃなくなっちゃう……!


 そんな話をしていると、


「それじゃあ、あたしがルカをお風呂に入れてあげましょうか?」


 と、会話が聞こえていたらしいリーシュさんが立候補してきた。


「そろそろあたしもお暇しようと思っていたところなの。女同士だし、別に構わないでしょう? ね、魔王様?」

「……そうだな」

「お風呂が済んだら、この子を部屋まで送っていくわ。……さあルカ、お風呂に行きましょうね」

「あーい……」


 私はリーシュさんに手を引かれ、大広間を後にする。

 このまま湯船に浸かったらそのまま寝ちゃいそうだから、今夜は身体を洗うだけで済ませた方が良さそうだなぁ……。




 *




 私の部屋にはお風呂が備え付けられていて、普段は王宮勤めの侍女さんか、タイミングが合えばリーシュさんと一緒にお風呂に入れてもらっている。


「ルカ、痒い所はない?」

「だいじょーぶれしゅ……」


 リーシュさんに頭を洗ってもらいながら、必死に眠気と闘う私。

 ……とは言っても、実際は半分以上意識が飛びかけてるんだけどね〜。

 何と言ったって、指の腹で頭皮をマッサージするように洗われるのが心地良いし、お湯もあったかくて気持ち良いし……。これで眠気が加速するのは当然だと思うんだよ、うん。


「貴女がこの国の、次期魔王ね……。ルカが魔王になったら……いつか【あの子】とも上手くやっていけるかもしれないわね」

「……? リーシュしゃん、あの子って……?」

「……何でもないわ。さて、次は身体を洗っていくわよ」


 うーん……何でもないなら、それで良いのかなぁ……?



 そうして私は、いつの間にかベッドの中ですやすやと寝息を立てていたのだけれど……。

 その事に気付いてリーシュさんに面倒を掛けてしまったと気付くのは、翌朝の事になるのだった。

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