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天使すぎる転生幼女は魔族を平和に導きたい!  作者: 由岐
第3章 いざ、お仕事スタート!
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初めてのお仕事

 私の身体の持ち主は、光属性を操る幼女だったらしい。

 植物園で育てられていた水晶花の花びらが、私の中の光の魔力と反応した結果、そうだと判明したのだ。


 けれども、それを知ったムウゼさんとリーシュさんの顔色が一変し……魔王のヴェルカズ様と、エディさんに報告することになった。



 どうやらこの世界では、魔族には光属性が使えないのだという。

 要するに、私は魔界では異端な存在だった。


 皆の話から察するに、私は魔族ではない何者かであるらしいのだ。

 このままじゃ王宮を追い出されるか、敵として魔王様に命を奪われる──


「……ルカよ。魔界の正統な支配者たる私の身体には、魔界のあらゆる種族の血の根源が流れておる。故に私は、貴様を一目見た時から、貴様が魔族ではない事を知っていた」


 ……そう思っていたのだけれど、現実は違っていた。


「……理由は、至極単純。エディオンが拾ってきたからだ」


 私はエディさんに拾われて、この王宮にやって来た。

 魔王様は、彼の友人であるエディさんを信用して、私のことをこのまま王宮に置いてくれると言った。

 魔王様とエディさんが、どれだけ信頼の厚い間柄なのか……私には想像することしか出来ない。けれど、エディさんのお陰で、私はまた命拾いしたのだと理解した。


 私自身、この身体の本来の持ち主がどこで生まれて、私がこの身体に宿るまでどうしていたのか……全く分からない。

 それでもエディさんは、紫の森で私を見付けてくれた。王宮に連れて行ってくれた。

 怪しい幼女でしかない、魔族でもない私を、魔王様は切り捨てなかった。


 それに──




「それじゃあルカ、次はこの肥料を撒いてもらえるかしら?」

「あーい! まかしぇてくらしゃい!」


 私がこの世界……ヴィオレ魔導王国の一員となって三日が経った頃、『植物園管理人補佐』という役職が与えられたのだ。


 それまでは、私のお世話係のムウゼさんとナザンタさんの兄弟と、時々エディさんが加わりながら、王宮の中を色々と案内してもらっていたのよね。

 厨房のお仕事の見学とか、物凄く広い地下図書館の中でムウゼさんとはぐれちゃったり……。


 後は……そうそう! ナザンタさんにおやつを貰ったり、リーシュさんとまたお茶会をしたりもしたんだよ。結構、充実した時間を過ごすことが出来ました!



 そういう訳で、私が魔王様から植物園管理人補佐……つまり、リーシュさんの助手に任命されたのが昨日のこと。その初仕事は、今日からなんだよね。

 私はリーシュさんから渡された小袋を手に、鉢植えの中に小粒の肥料を撒いていく。


 この肥料は、なんとあの黒髪イケメン魔王様が調合したものなんだって!


 リーシュさんが植物の生育不良について相談したら、次の日にこれを作って持って来たんだそうだ。彼女がそれを使ってみたところ、効果は的面。なかなか上手く育たなかったお花が、すくすくと成長するようになったらしい。

 相談を受けた翌日に、きちんと効果を発揮する肥料を作れる魔王様は凄いよね。……でも、あの冷酷オーラが凄まじい魔王様に相談が出来るリーシュさんも、かなり肝が座ってると思うんだ。


 私なんて、自分が魔族じゃないって知ったあの日以来、どうにも苦手意識が芽生えちゃって……。トラウマっていうのか、単純に魔王様が怖いっていうか……一対一じゃ、とてもじゃないけど話なんて出来そうにない。


 そんな不敬極まりないことを考えているうちに、私は頼まれていた分の鉢植えに肥料を撒き終わっていた。


「リーシュおねーしゃん、これで大丈夫れすか?」


 他の植物のチェックをしていたリーシュさんに声を掛けると、彼女は作業の手を止め、こちらへやって来る。


「……ええ、ちゃんと指示通りこなせているわね。偉いわよ、ルカ」

「えへへっ」


 そう言って、リーシュさんは穏やかな笑みを浮かべ、私の頭を優しく撫でてくれた。


 ……リーシュさん、私にはこうして普通に笑ってくれるんだよね。

 初めて植物園に来た時も、彼女は鼻歌を歌いながら水やりをしていた。あの時と同じ笑顔を、リーシュさんは私に向けてくれているのだ。


 それなのに、ムウゼさんやナザンタさんの前では、いつも澄ました顔をしているのだ。

 男の人が苦手なのか、子供や植物にはいつも優しくしているだけなのか……よく分からないけどね。


「リーシュおねーしゃん。ちゅぎは、どんなお仕事をしゅればいいれしゅか?」

「張り切りすぎて、初日からバテないようにしなさいよ?」

「あーい!」

「ふふっ、頼もしいお返事ね」


 とにかく今は、管理人補佐として色々と仕事を覚えていかないと!


 このガラスドームの植物園では、魔王様にお出しするお茶の材料や、薬の素材になる植物なんかを育てているらしい。

 私がやれることが増えていけば、それら全てを一人で管理しているリーシュさんの負担を、少しは和らげることが出来るだろう。

 最初は魔界に来ただなんてどうしようかと思っていたけれど、王宮の人達は皆親切にしてくれている。私のお茶会仲間で、職場の先輩でもあるリーシュさんも、その一人。

 私がお仕事を頑張ることで、ちょっとでも皆への恩返しになれば良いなぁ……なんて思うのです。




 ……私が魔族じゃないことを知っているのは、三日前に応接室に居た魔王様とエディさん、ムウゼさんとナザンタさんの四人。そして、目の前で水晶花の色が白くなったのを見たリーシュさんだけだ。

 このことが外部に漏れれば、私の存在を危険視する勢力に狙われる恐れがあるらしい。


 なので、今後は私の魔力属性については秘匿しつつ、ひとまず植物園で働くことが決定したのだった。


 結局のところ、私が魔族でないのなら何者なのか、よく分からないらしい。

 全ての魔族の根源……? だという魔王様にも分からないんだから、どうしようもないよね。



 それから引き続き、私はリーシュさんの指示に従って彼女のお仕事を手伝っていた。

 植物園での初めての仕事は、時間が経つのがあっという間だった。


「ねえ、そろそろお昼にしましょうか」


 夢中でお仕事に没頭していたら、腹の虫がぐうっと鳴った。


「あっ……!」

「今日は、朝からずっと頑張ってくれていたものね。うふふっ、早く食堂に向かいましょうね」

「ううぅ……おなかペコペコれしゅ〜」


 私のお腹の音でクスクス笑うリーシュさんに、手を引かれていく。

 二人で「今日のメニューは何だろう?」なんて他愛もない話をしながら、私達は青空が広がる王宮の庭へと出た。

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