表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/19

レクサムダンジョンへ

「なるほど、違う世界から召喚……」

「まさか本当にやっているとはねぇ……」

「え?何か手がかりが見つかったのか?」

「これよ」

「偶然手に入れた物だ」

「「「ん?」」」


 ラルフが机に置いた紙を何となく全員がのぞき込む。


「少し前、レクサムから大規模な魔法が使われたときに生じる、魔力波動を感じた」

「大規模な」

「魔力の」

「波動?」

「だがその後、特に何が起きるでも無い。はて一体何だろうと、少し街の様子を見に行ってみたら」

「みたら?」

「ぶっ倒れて消滅しかかっているゴーストがいてな。そいつからこれを託された」

「ゴースト?」

「レクサムの近くで?」

「確か、こう言ってたな。『ミキタカとアカネにこれを』と。誰のことだかわからんが」

「それ俺と茜!」

「はい!」

「なんと……」

「世間って案外狭いのかしら?」


 ラルフから紙を受け取り、二人がじっと見る。


「これは?」

「魔法陣的な何か?」

「うむ。何だかよくわからんがな」

「エドガー……」

「ね」

「ん?エドガー?」

「このタイミングでレクサムでこんなメモを取ってくるゴーストなんて」

「エドガーくらいね」

「それじゃ、これは……」

「勇者召喚の魔法陣を描き写した物か?」


 長谷川の言葉に、ダン!とラルフが立ち上がる。


「詳しい話を聞こうじゃないか!」




「勇者召喚、五十年前から今にいきなり移動し、ゴーストになったエドガーなる魔術師、元の世界の記憶……なるほどな」

「でも、そうだとしたら……この部分とこの部分って、実験したけどうまくいかなくて諦めた空間魔法の構造じゃないの?」

「空間魔法?」

「大陸の北から南へ瞬時に移動できたら便利かなと思って研究したんだが今ひとつでな」

「へえ、そんな魔法が」

「短距離で移動実験したらな……混ざったんだ」

「混ざった?」

「皿にスプーンとフォークを乗せて試したんだが、混ざった」

「いきなり自分でやらなくて正解だったな」


 ユージと長谷川の脳裏に「ハエと合成される人間」というキーワードが浮かぶ。


「その時の魔法陣によく似てる部分があるんだ」

「そうだな、良く似た物を使う魔族がいるな。少し違う魔法になるが」


 ヴィルがステラの推測に賛同する。


「え?」

「ま、俺もそれなりに魔法には詳しいんでな」

「ほう……今、コイツの解析に専念しなければならないというのが残念だな」

「一段落付いたらじっくり語り合いたいものだ」


 何か通じる物があったらしい。


「えーと、それでどうなるんだ?」

「この魔法陣で起こったと思われる出来事がだいたいわかったからな。三……いや二日で詳細を解析してみせる」

「無論、俺も協力しよう」

「おお」

「これの詳細がわかれば、色々と出来ることがあるかもしれないわ」

「じゃあ、もしかして……元の世界に戻ることも?」

「出来るかもな」

「「「やったぁ!」」」




 魔法陣の解析はエルフたちとヴィルに任せるとして、その間に他の者達はと言うと……


「念のためのレベル上げでもするか?」

「長谷川さん、はっきりと言って下さい」

「……俺も村田君の能力でチートなレベル上げとか体験してみたい!」

「わかりました。で、どこでやります?」

「レクサムダンジョンでいいだろ。難易度も高いからレベルも上げやすい」

「あのダンジョン……って、どうやって中に入るんです?」


 レクサムダンジョンの入り口はチェックが厳重。長谷川も幹隆たちも色々とやらかしているので、簡単に中に入れるとは思えない。


「そうか。普通は知らないよな。あのダンジョン、裏口があるぞ」

「は?」

「入りづらい場所にあるから知ってる奴はほとんどいないが」

「じゃあ、そこから入るとして、二日間でどこまで潜れるのか……十層くらいを突破して引き返すくらいかな?」

「イヤ、さらに裏技を使おう」

「裏技?」




 魔法陣の解析にかかっている三人にダンジョンに出掛けてくると伝えて、ダンジョンから少し離れた森の中へ向かう。なんの目印も無さそうな森の中を長谷川はズンズン進み、


「ここだ」


 何もない地面を指さす。


「えーと」

「その……」

「言いたいことはわかるよ。偶然見つけて、色々便利そうだったから隠したんだ」

「隠した?」

「まあ、見てな」


 ポケットから小瓶を取り出し、地面に粉末をばら()くと、すぅっと地面の色が消え、大きな穴が開く。


「おお!」

「スゴい!」

「一応、錬金術師なんでな……このくらいしか出来ないけど」




「へぇ、ここのダンジョンはこんな感じなんだ」

「ユージはダンジョン初めてなのか?」

「一度だけ色々あって入ったけど」

「へえ」

「一応言っておくけどな。ハリネズミにダンジョンはキツいぞ」

「え?」

「まず、広さがキツい。俺、どんなに頑張っても人間の歩行速度には勝てないからな」

「なるほど」

「後は、食糧とかの問題。荷物が持てないから現地調達がメインになるけど、スケルトンとか食うとこ無いだろ?」


 実にシンプルな問題だった。


「で?早速ここからレベル上げを?」

「イヤ、ここじゃたかが知れてるだろ。えーと、確かこっち……だっけ?」

「はい」


 長谷川の問いにティアが答え、先導して歩き出す。




 しばらく歩くと一行は小さな小部屋に着いた。


「ここって……」

「川合君は気付いたね。そう、ここを使おう」

「えーと……ミキくん」

「ん?」

「狐火の浮遊、用意」

「え?」

「もしかして……」

「リディさんは風の魔法の用意を」

「風?」

「すぐに落下します」


 長谷川が岩の隙間に小石を投げ入れると、カツンと跳ね返り、地面が光る。




「はぁっ、はぁっ……」

「も、もう少し、心の準備を……させて……」

「いやあ、ずいぶん落ちてきたもんだな」


 幹隆が慌てて数名抱え込んで狐火の浮遊を使い、残りをリディの魔法で包み、どうにか着地。


「ここからやっていった方が、レベル上げしやすいだろ?」

「そうですね」

「で、ここからどうやって出るんだ?」

「えっと……あ、あれです。あの辺に外に出られるような穴が」

「じゃ、各自登るように」

「うぃーっす」

「おー」


 俺たちあんなに苦労して登ったのになと、幹隆と茜は顔を見合わせるが、まあ仕方ないだろう。




「ここは何層なんだ?」

「んー、多分ですが十八層か十九層かな、と」

「どうする?上に向かうか下に向かうか」

「どっちもどっちですね」

「待って、ミキくん。ここが十九層だとしたら」

「したら?」

「ボーナスがもらえるかも」

「あ、あれかぁ」

「「「ボーナス?」」」


 推測ですが、と前置きして説明する。


「最初の百匹でボーナスか……よし、狙うぞ!」

「「「おう!」」」

「あの、ちょっと質問」


 リディが手を上げる。


「何だ?」

「レベルとか経験値とか……何?」

「「「え?」」」


 え?知らないの?と言う空気が流れる中、ユージがあることに気付く。


「皆に質問。そのステータスとかって、どうやって見るんだ?」

「どうって、こう……ステータス、って」

「……それ、誰でも出来るのか?」

「「「あ!」」」


 才能を調べるオーブに触れたからステータスが見えるようになっているが、ほとんどの冒険者はそのオーブに触れる機会もない。エルフも(しか)り。


「その……何だ、リディは魔物を狩っていったときに『前より簡単に狩れるようになったなぁ』とか『弓の威力が強くなったなぁ』って事、無いか?」

「あるけど……練習するし、鍛えるし、戦い方にも慣れてくるんだから当然でしょ?」

「……えー、皆さん」

「「「はい」」」

「リディには後で説明しておきます」

「頼む」


 それではと気を取り直して、全員が穴を通ってダンジョンへ入る。


「十八層みたいですね」

「そうか……どうする?」

「どうすると言われても、あまり道順を覚えてるわけではないので何とも」

「わかった。適当に進もう。それで上に向かえるなら上に。下に向かえるなら下へ」


 長谷川がもっともらしいことを言っているが、要は行き当たりばったりである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ