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方針は決まった

 続いて、なんかたくさんいる集団だ。


「そちらの近藤……ユージと同じくらいの時期にこっちに召喚されて、長谷川さん同様に城から脱走した村田幹隆」

「同じく川合茜です」

「同じk「以下略」

「「「ちょっ!」」」

「まあ、僕から。塚本幸子だ」

「日野のどかです」

「越智香緒里です。よろしく」

「清水聡子です」

「あとは三馬鹿ね」

「ちょ!」

「稲垣健太です」

「中山徹っす」

「松島浩平」


 賑やかな連中だ。

 で、さらにあっちが。


「レクサム王国、城付きのメイド、ティアです。この面々の引率を不本意ながら」


 格好こそ冒険者っぽく、動きやすそうだが、その所作はある種の美しさがある。だが、苦労してそうだ、色々と。


「ヴィルム・ダルムデン、ヴィルと呼んでくれて構わん。魔族の国々十二カ国の調停役に五年前に任命された。昭文から、王国が魔王討伐に乗り出したと聞いて、さすがに看過できないと判断し、同行してきた。魔族側の総意として、戦いは避けたいが……人間側が戦いを望むなら、私一人で全軍相手にするつもりもある」

「全軍を、一人で?」

「そのくらいの力はあるぞ。ヴィルの魔法を見せてもらったが、変な笑いしか出なかったレベルだ」


 ちょっとだけ、全員が引き気味の中、茜がぼそりと言った。


「ミキくんも大概だけどね」

「う……」

「そういう意味だとユージも結構な感じよ?」

「え?」

「ほぼ単独で地竜倒したし」

「あ、もしかして今回のオーガ上位種を倒したのって」

「はい、俺です」

「うわあ、あと少しのところまで近づいていたんだけどな」

「ぶっちゃけ楽勝でした」


 二人がワハハハと笑う。


「ふと思ったんだけど」


 稲垣がおずおずと手を上げる。


「ぶっちゃけ、ここにいるメンバーだけで国の一つや二つ、滅ぼせるんじゃないか?」

「否定はしない」

「街一つ吹っ飛ばすだけなら半日で終わるかも」

「言えてる」


 大陸の歴史を動かすほどの戦力が集まっているのか。


「とりあえず、魔王については王国の勝手な妄想と言うことでいいかな?」

「参考までに聞きたいんだが、もしかして過去の魔王討伐って……一方的にいちゃもん付けて喧嘩売ってただけって事か?」

「そうだな。村田君の解釈でだいたい合ってる」

「俺は王国がどういうものか知らないけど、結論としては王国はクズだって事でいいのかな?」

「いいだろ」

「だな」

「じゃ、勇者召喚と生贄だが……」

「待ってくれ」

「ん?どした、ユージ?」

「勇者召喚って……魔法だよな?それも結構大規模な魔法だよな?」

「ま、そうだな」

「今回の場合、準備に半年ほどかけていたはずです」


 ガバッとユージがリディを見上げる。


「リディ、使われた儀式魔法、見つけたぞ」

「あ……」

「え、何?」

「そうだな。勇者召喚とかそう言うのの前に、俺たちのことを話そうか」

「聞こう」


 時折現れる腐り神という魔物を必死にエルフが撃退していることと、ステラが予想した儀式魔法について話す。


「えーと、エドガーの話をしていいか?」

「何か繋がりそうだな、聞こう」


 幹隆が勇者召喚と、エドガーから聞いた召喚魔法の生贄、そしてエドガー自身に起こったことを話す。


「俺が向こうで覚えている日の翌日……まあ、時間的には日付が変わっていたけどな。で、その日が修学旅行初日、そして転移か……」

「関連があるんだか無いんだか」

「それと、完全に推測だが、召喚魔法の生贄で余った魂とかそう言うのが変な方向に作用して、腐り神とか言うのを生み出したって可能性が?」

「で、ユージが巻き込まれてこっちに来た?」

「裏付けるものは無いが、可能性は高いんじゃないか?」

「そして、その災害みたいな腐り神をエルフたちが人知れず、多大な犠牲を払って退治していた……」

「俺、知らなかったよ……落ちるところまで落ちた評価って、まだ落ちるんだな」

「真性のクズすら生ぬるいな」

「一つだけ言えるのは、一刻も早く、勇者召喚なんてのを止めさせないと、被害が増え続けるって事か」


 全員が頷く。


「だが、今も城に残されている勇者召喚のための魔法陣を壊すのは早計すぎるな」

「「「え?」」」


 長谷川の意外な一言に全員が驚く。


「まず、勇者召喚によって何が引き起こされているのか、きちんと確認すべきだろう」

「でも、どうやって?」


 長谷川がヴィルを示す。


「何かの助けになればいいという意味でもヴィルに頼み込んで一緒に来てもらった」

「任せてくれ、とは断言出来んが、微力ながら協力するつもりだ」

「そして、俺が調べた限り、過去に召喚された者が元の世界に帰ったという記録は無い」

「そう……か」

「はあ、ある程度予想はしていたが」

「だが、こっちで生涯を終えたという記録も無い」

「え?」

「勇者召喚の魔法陣……あるいは城に他の魔法陣があるのかも知れんが、帰る方法がある可能性が」

「ホントか?!」

「帰れるのか!」

「やった!」


 騒ぎはじめてしまったが、長谷川が鎮める。


「落ち着け、まだそうと決まったわけじゃ無い」

「でもさ、もう帰れないって諦めてたんだぜ」

「可能性が少しでもあるなら」

「はは……そうだな」

「でも、どうやってその魔法陣とやらを使うんだ?」

「そこはヴィルが」

「……それなりにすごい魔法でしょ?ヴィルがどのくらいの才能かわからないけど、一人に頼り切りってのもちょっと……」

「あ……」


 越智の一言で静まりかえってしまう。


「そこは……あてが無いわけじゃない」


 ユージが答える。


「え?」

「さっき言った、リディの母ちゃんが色々と調べてくれている。簡単にはいかないだろうけど、相談してみようぜ。何かいい方法があるかも」

「なるほど、魔法に()けたエルフの協力を得られるなら心強いな」

「でも、今は大陸中を飛び回ってるんだろ?どうやって連絡するんだ?」

「そこは……リディがきっと、エルフの秘伝で」

「え?わ、私?」

「だって、リディの母ちゃん、リディよりも速く飛べるんだろ?俺たちじゃどうやって探せばいいのかわからん。もしかして、連絡取る方法がないとか?」

「まあ、あるけど」

「「「あるのかよ!」」」

「そりゃあ……エルフだし?」


 エルフすげえ。




「じゃあ、ちょっと整理しようか」


 長谷川がパンパンと手を叩いてまとめに入る。


「まず、王国が言ってたような魔王はいない。何となく魔王と呼ばれる者はいるが、ただの国家間の揉め事をいい感じに収める……何て言うか、気苦労の絶えない人」

「いや、最近はそれほど大きな揉め事もない。しばらくこっちに来ても問題ない程度には」

「そうなんだ?」

「少なくとも先代と先々代から色々と話は聞いているが、俺が魔王扱いされて、なんか王国がひどいって話を異世界から来た人間から聞いたってのが一番のトラブルだ」

「なるほどね。つまり、勇者召喚なんぞやって、俺たちのいた世界にも魔族にも迷惑かけまくってる王国はクソ。いや、クソ以下。比較するクソに失礼なレベル」


 うんうん、と全員が頷く。


「勇者召喚の魔法については要調査。俺たちが帰る方法に繋がる可能性がある。だが、そのためには俺たちでは明らかに力不足。ヴィルの調査にも期待したいが、幸いなことにエルフたちと利害が一致しそうな感じ。協力を仰いでみよう」

「異議無し」

「だが、その方法については色々確認が必要だな。俺たちが無事に帰れたとしても、こっちにまた変な魔物を生み出したんじゃ意味が無い」

「そうだな」

「俺たちは被害者だけど、だからと言って無関係な人に迷惑かけていいって理屈は通らないからな」


 全員の意見が一致した。


「さてリディ、早速だが連絡を」

「うん、わかった」


 連絡は朝になってからとなった。詳細を確認した結果、目立ちすぎると判断したためである。

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