0 どうやら、ゲームの世界に入ったようです
ああ、最高だ。
私は小鳥遊華。高校一年生。
今、私の右手には先程買ったばかりの「ドキドキスクールラブ」通称、ドキスクの設定資料集が入ったビニール袋が握られている。ドキスク男性向け恋愛ゲームなのだが、攻略対象の多さや女の子の可愛さから人気があった。私の好みの女の子のキャラが結構いるし、少しだが百合描写があるという噂も聞き、つい買ってしまった。
そう、私は大の百合好きなのだ。一体誰が誰とそういう関係なのかというとーーーーー
「君!危ない!」
青信号の中、横断歩道を渡っていた私は悪くないだろう。
私の何倍もあるトラックが迫りくるのを気づけなかった。
大きなクランクションの音と、悲鳴が聞こえた。
「おい、小鳥遊、大丈夫か?」
男性の声が聞こえる、あれ、この声聞き覚えが…というか私は死んだはずじゃ…?目の前の男性の顔を見るとそこには…
「黒田廉!?」
そこには、ドキスクの黒田廉の姿があった。黒田廉は主人公の親友キャラであり、手助けもしてくれる優秀なキャラである。黒髪で顔はいいし、性格もいいらしい。そして、このキャラも攻略できる。私は興味なかったが…
「なんでフルネームで呼ぶんだ。大丈夫じゃなさそうだな…小鳥遊、立てるか?」
そういえば、そもそも私って女なのだろうか。私の声は私のままだったが、主人公は男のキャラだったはずだ。主人公の声が収録されていなかったので、声がわからない。声が高い男の子、とか?
「私って女ですか…?」
「当たり前だよ!お前ホントに大丈夫か!?やっぱり机で頭打って頭おかしくなったんだな!?」
「机で頭打ったってどういうことですか!?」
ドキスクでそんな描写あっただろうか…いや、記憶にない。まさか、黒田廉ルートか!?
私は女の子しか興味なかったので、黒田廉ルートなんて考えたこともなかった。確かに今の私は女だし、そっちのルートにもなるか…いや、そもそも他のキャラクターはいるのだろうか。
「アンタは、そこで転んで頭打ったのよ!ホントにバカね!」
この声は…ツンデレ、赤髪、ツインテール、ツリ目、身長は164cm、かわいい。ついでに成績がいいし、運動できる、
「浅野華恋!?」
「な、なによ!?」
「かわいい!実物だ!結婚しよう!」
最高!ゲームの世界最高!これが夢なら覚めないでくれ!まて、浅野華恋がいるっていうことは、もう全部のキャラがいるっていうことだ…!
「アンタいきなり何言い出してるの!?」
浅野華恋が何か言ってるが、気にしない。教室を見渡すとそこには、雨森雫の姿がある。
雨森雫はおとなしい子で、このクラスの委員長をやっている。正確には、やらされたっていう方が正しいのだが…それは置いといて…眼鏡っ子、黒髪、身長は153cm。成績優秀で、浅野華恋の幼馴染で、主人公にこの二人と何の接点もないと、よく二人で一緒にいるところを見かける。そう百合である。素晴らしい。
私は静かに立ち上がり、雨森さんに声をかける。
「雨森さん、是非浅野さんとは仲良くしていってください。よろしくお願いします」
深く頭を下げる。
「えっ!?は、はい…」
「じゃあ、これで」
ふぅ〜、いい仕事をした。さて他のキャラも見に行くか…
教室を出て、他の攻略対象キャラを探しにいく。
「何だったんだ…?」
教室では、クラスメイトの困惑した声が聞こえた。




