お布団と結婚してしまった彼女 《寝起き》(1200字)
ん、おはよ〜。
えー。
も〜朝なの〜?
まだ、ねむたいよー。
ねえ、もうちょっとだけ寝ててもいいでしょ?
あと五分だけ。
嘘じゃないよ。
そんなこと言って、前は一時間寝てた?
本当に?
そんなことあったかな〜?
早く布団から出ろって?
やだ。
さむい。
なんでお布団から出なきゃだめなの!
お布団の外が寒すぎるのが悪いんだよ。
ちょっと〜、無理やり布団取ろうとしないで〜。
だめよ!
私からお布団を取らないで!
お布団はもう私のものなの!
私とお布団は愛し合っているの!
こ、小芝居じゃないわ!
私たち本気なんだから!
私たち一晩中、一緒だったんだから!
そうよ! ずっとよ!
何言ってるの!
蹴飛ばしてなんかいないわ!
私、寝相いいもの!
お布団のこと、蹴飛ばすわけないでしょ!
そんな嘘ついたって、だまされないわ!
私はお布団のこと大好きだもの!
大好きな相手を、蹴飛ばすわけないでしょ!
あなたのことも蹴飛ばした?
それも嘘よ!
気のせいよ!
私じゃないわ!
きっと幽霊よ!
幽霊が蹴飛ばしたの!
あ〜、お布団、取らないで〜。
無理やり、取ろうとしないで〜。
ごめんなさい〜。
蹴飛ばして、ごめんなさいー。
でも、お布団はやさしいのよ!
蹴飛ばされても、私に優しいのよ!
お布団はね!
私のこと、あたたかく包み込んでくれるのよ!
とっても、ぬくぬくで
幸せな気持ちにしてくれるのよ!
今だって、こんなに、あたたかいのよ!
あ! ちょっと! え! 何するの!
つめたッ! 冷たいよー!
冷たい手、服の中、突っ込まないでよ!
や〜だ〜!
こういうのじゃなくて!
もっと違う感じがして欲しいの!
こういうのは求めてないから!
もっと甘い感じの起こし方してよー!
ドラマとか漫画みたいな感じの!
もっとロマンチックなやつ!
ちゃんと考えて!
え?
目をつぶって欲しいの?
……うん、分かった。
間(5秒くらい)
‥…つめたッ! また手じゃんッ!
ひどい!
今のはキスする流れでしょ!
何笑ってんのッ!
めっちゃ笑うじゃん!
もう怒った!
完全に怒ったよ!
もうお布団から絶対に出ないからね!
何言われたって、出てあげないんだから!
え!
お布団から出ないと、
また手を突っ込むですって!
そんな脅しなんかに、
私は負けないわ!
私とお布団との絆は、
誰にも壊すことはできないのよ!
……あれ?
今の音って何?
ひょっとして、ご飯ができた音?
やったー、朝ごはんだ〜。
ごっはん! ごっはん!
え?
布団?
もういいよ。
布団入ったままじゃ、ご飯食べれないし。
あ! ちょっと!
冷たい手、つっこまないでー!
なんで怒ってるの〜!