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クールで小悪魔な後輩と練習してると、ドSヤンデレになってしまった(2700字)

あれ? 先輩、こんなところで会うなんて珍しいですね。


家庭科室で何をしてるんですか?


私ですか? 少し料理の練習がしたくて。


明日、調理実習があるんですよ。


先輩も料理の練習ですか?


……よく料理をする? 先輩がですか?


いえ、別に驚いてませんよ。ちょっと意外だっただけで。


料理の好きな人って、手先が器用だったり、几帳面な人が多いじゃないですか。


先輩にそういうイメージがなかったもので。


手先も器用だし、料理も得意?


本当ですか?


……分かりましたよ。先輩がそこまで言うなら信じますよ。


先輩が料理の達人だって。


じゃあ、料理がすごく得意な先輩に1つお願いごとをしてもいいですか?


私にうどんの作り方を教えてもらえませんか。


ええ、うどんです。


明日の家庭科の授業で、みんなでうどんを作ることになってるんです。


たしかに家庭科の調理実習で作るものとしては、ちょっと変わってますよね。


でも、この学校がちょっとおかしいのは、今日に始まったわけではないですし。


それにこの学校が変だと言っても、先輩の変人ぶりだって負けないと思いますよ。


だっていつも先輩は変なことばかりしてますよね。この前も学校の食堂で変なことしてたの見ましたよ。


あんな風に食べ物で遊ぶのは、私よくないと思いますよ。


あんなことしてた先輩に頼むのもちょっと不安ですけど、美味しいうどんの作り方教えてくれますか?


そうなんです、私うどんを作るのが、ちょっと苦手で。


一応、小麦粉や水の量は正しい量を入れているはずなんですが、何回作っても麺が固かったり、粉っぽくなったりしてしまって。


もっとツルツルしていて、シコシコでモチモチの食感のうどんを作りたいんです。


明日の調理実習もそうなんですけど、上手にうどんを作れるようになって、弟に美味しい手作りうどんを食べさせてあげたいんです。


はい、じゃあ、私がうどんを作っているところを見てもらって、何かおかしいところがあったら言ってくださいね。


今もうどんを作ってる最中で、ちょうど、うどんの生地をこねていたんです。


ん……よいっしょ……よいっ……しょ。


こんな……風に……体重を……のせて……ねばりがでるまで……よいっしょ……生地をこねてました……。


ふぅ……どうでしたか。


上手くこねられてたとおもうんですが。


え?こね具合が足りてないですか?


そうですか……。かなり力を入れたつもりだったんですけど。


ん……よいっしょ……よいっ……しょ。


これぐらいでどうですか? ……まだ弱いですか。


そうですか……うどんをこねるのって意外と体力をつかうんですね。


運動部に所属しているので、体力には自信があったつもりなんですが。


どうやったら、もっと力強く生地をこねることができますか?


足で踏む……ですか。


たしかに、本場のうどん屋さんとかで足で踏んだりするのは見たことがありますね。


手でこねるより、体重をぜんぶ乗せることができるわけですね。


分かりました。やってみますね。


こうやって生地をビニール袋で包んで、


……よいっしょ……よいっ……しょ。


足で踏んで生地を伸ばしていけばいいんですよね。


え? まだ、ダメなんですか? 踏み方がまだ良くないんですか?


はじめはもっとカカトを使って、生地がもっと平らになってから、足全体で踏むんですね。


……どうですか?こんな感じでどうです?


おしいけど、まだダメですか……。


足で踏むのって意外と難しいんですね……。


いい練習法がある?


そんな方法があるんですか!? どんな方法か、教えてもらってもいいですか?


先輩の背中を、うどんの生地だと思って踏む?


……いえ、冷たい目なんてしてませんよ。


先輩の言ってることが、ちょっと信じられないだけで。


本気で言ってますか? 先輩の背中を踏んで、うどんの生地を伸ばすのが上手になると?


こう言うと失礼かもしれませんが、先輩が私に踏まれたいだけなんじゃ?


たしかに嘘をついてる目には見えませんが……。


……はぁ、……分かりましたよ。


じゃあ、先輩、横になってもらえますか?


では、踏ませてもらいますけど、こういうの初めてなので、痛かったらすみません。


……よいっしょ……よいっ……しょ。


どうですか? うまく踏めてますか?


痛くはないですか?


あの、先輩、やっぱり顔がにやけてませんか?


背中のツボを押されて、気持ちいいだけなんですか?


後輩の女の子に踏まれて、にやけてる訳ではないんですよね?


はぁ……。


先輩って、ほんとうにどうしようもない人ですよね。


すごく頼りになる時もあるのに、時々、こんな風にすごく変なことを始めますよね……。


ほんとうにどうしようもない先輩……。


あの、先輩……。


ずっと言いたかったんですけど、……先輩はいつまで私のこと苗字で呼ぶんですか?


そろそろ下の名前で呼んでくれてもいいんじゃないですか?


女子を下の名前で呼ぶのに慣れてない?


ふーん、そうですか。


でも、よく一緒にいるクラスメイトの女子を名前で呼んでるの、聞いたことがありますよ?


あの人は幼馴染で「特別」だから……ですか。


つまり、私は先輩にとって「特別」な後輩じゃなかったってことですね。


他の1年生と同じで「特別じゃない」後輩だったってことですよね?


だって、そういうことになりますよね?


今だって、私のこと苗字で読んでますし。


今さら遅いですよ。名前で呼んで欲しいって、今はもう思ってません。


名前で呼んでもらっても、先輩の幼馴染と「同じ」になるだけで「特別」にはなれませんから。


だから、私のことはこれから「様を付けて」呼んでくださいね。


後輩のことを「様付け」で呼ぶのは恥ずかしいですか?


でも、先輩に拒否権なんてありませんよ。


こうやって後輩に足で踏まれて、にやにやしてる先輩に断る権利はありませんよ。


ほら、分かったらちゃんと私のことを「様付け」で呼んでください。


そうそう。よくできましたね、先輩。


えらいですね。えらいえらい。


明日からも私のことは、ちゃんと「様付け」で呼んでくださいね。


……ふふ。そんな顔しないでくださいよ。


冗談ですよ、先輩。


他の生徒がいるところで、「様付け」なんてされたら、私のほうが恥ずかしいですから。


今まで通り、苗字で呼んでもらっていいですよ。


無理して名前で呼んだりしなくてもいいですから。


ただ、2人きりの時は、なんて呼べばいいのか、分かりますよね? ふふ。

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