猫化してしまった魔法使いちゃん(1100字)
にゃ~。勇者さま~。助けてくださいにゃ~。
わ、わたしにゃ。魔法使いにゃ。信じてくださいにゃ。
魔王軍の手先なんかじゃないにゃ。
こんなにかわいい魔王軍の手先なんかいないにゃ。
し、信じてくれるのにゃ?
でも、さっきの言葉で、私だって信じてもらえるのも、にゃんだか複雑な気分にゃ。
実は魔法の研究をしてたら、ちょっと失敗して、こんな姿になってしまったにゃ。
う、う、ごめんなさいにゃ。
もう無茶な研究はしないにゃ。
反省したにゃ。
でも、魔法の研究は私の生きがいだから、ちょっとは許して欲しいのにゃ。
いつかたくさんの人たちに役立つすっごい魔法を開発して、たくさんの人からチヤホヤしてもらうのが私の夢なのにゃ。
……って、人が真剣な話してるのに、なんで肉球をプニプニしてるのにゃ。
や~め~る~にゃ~。
勇者さまはそうやって動物の気持ちを考えないで、自分が触りたいところにベタベタさわるから、動物にすぐ嫌われるのにゃ。
にゃにゃっ!? 前足もダメにゃ。そんなとこ触られても、ちっとも気持ちよくないにゃ!
にゃにゃあ! 尻尾もダメにゃ! 前足より、もっとダメにゃ! 絶対に触っちゃ嫌にゃ!!
にゃにゃあ~♪
せ、背中はちょっといい感じにゃ。ただ、もっと優しく撫でてほしいにゃ。そうそう、いい感じにゃ~♪
にゃはぁ~♪
頭なでなでされるの気持ちいいにゃ~♪
そこいいにゃ~♪ もうちょっとおでこのほう撫でてくれてもいいにゃ~♪
にゃふう~♪
って、こんなことしてる場合じゃないにゃ。
勇者さまにお願いがあったのにゃ。
猫化の魔法を解除するために、勇者さまに協力して欲しいのにゃ。
実は勇者さまに、ちょっとしてもらいたいことがあるのにゃ……。
……ううう、恥ずかしいにゃあ。
……こういう魔法を解除するっていったら、アレにゃ。アレを勇者さまとしないといけないのにゃ……。
アレっていうのは……、にゃにゃ……、恥ずかしいにゃあ……。乙女の口からは、ちょっと言いづらいにゃあ……。
もー、いいから、目をつぶって欲しいにゃ。
すぐ済ませるにゃ。早く目をつぶるにゃ。
それじゃあ、するね?
……って、あれ? 戻って……る?
私、人間に戻ってる?
あれ、僧侶ちゃん、いつの間に。
ひょっとして僧侶ちゃんが魔法で治してくれたの?
わー、ありがとー。うん、猫になっちゃって、ほんと大変だったの。
……でも、あとちょっとだったから、もったいないことしたかな……。
え? な、なにも言ってないよ!?
気のせいだよ、気のせい。えへへへ。




