偽装王子とメイドさん(1200字)
ごめん、メイドさん
ぼく、メイドさんに隠してることがあるんだ
ぼく、実は男じゃなくて、女なんだ
父さまも、母さまは僕が産まれてすぐに、
病で死んじゃったでしょ。
王家の直系の男子がいなかったら、
次の王が誰になるか争いが起きちゃうから、
宰相がそうならないように、
本当は姫だった僕を、王子ってことにしたんだって。
だから、ぼく、本当は女なんだけど、
男としてずっと生活してたせいか
ぼく、女の人のほうが好きなんだ。
その……それで、
ぼく、実は、メイドさんのことが好きなんだ。
一緒にいると落ち着くし、
メイドさんの笑った顔とか、優しい雰囲気が、すごく好きで。
もし嫌なことがあっても、
メイドさんがそばにいてくれたら、
不安なことがなくなって、安心できるんだ。
……え?
……うん、それもあるかな。
メイドさんと、母さま、どこか似てる感じがする。
でも、違うよ。
別にメイドさんを、母さまの代わりにしてるわけじゃなくて。
本当にメイドさんのことが好きなの。
ごめんね。
こんなこと急に言われても困るよね。
本当は女なのに、男のふりしてるだけでも変なのに。
女なのに、女が好きだなんて、もっと変だもんね。
…………え?
メイドさんも、女の子が好きなの?
本当に?
僕に気を使って、そう言ってくれてるんじゃないの。
かわいい女の子が好き?
……そうなんだ。(悲しそうな声)
じゃあ、ぼくみたいな、かわいくない子は、
あんまり好きじゃないよね?
……ぼくが、かわいい?
本当に?
じゃあ、メイドさん、
ぼくの恋人になってくれる?
いいの!?
……うれしい。
好きって気持ち、伝えようかずっと迷ってたんだけど、
ちゃんと伝えてよかった。
……ほんとに、よかった。(ほっとした声)
ねえ、メイドさん。
……あの、ハグしてもいいかな。
ぎゅーってしたい。
……やわらかい。
……それに、いい匂い。
……ねえ、メイドさん。
もうちょっとだけ、すごいお願いもしていい?
……メイドさんの胸に、顔、うずめてもいいかな?
ねえ、恋人だし、いいでしょ。(すがる感じ)
いいよね?
え、いいの!
やったぁ!
……あ、すっごくやわらかい。
うれしい。
ぼく、メイドさんの恋人になれて、
幸せだよ。
え?
メイドさんも、ぼくにお願いがあるの?
うん、いいよ! 恋人だもんね!
何でも言って。
え?
ぼくの胸にさわりたいの?
でも、……ぼくの胸ってお姉さんみたいに大きくないよ?
それでもいいの?
うん、普段も何も巻いてない。
まだ、ぺったんこだから、
誰にもばれてないと思う。
こんな、まったいらな胸さわっても
何にも楽しくないと思うけど。
どうしても、さわりたいの?
……うん、じゃあいいよ。
あの、……痛くしないでね。




