姫様を誘拐するヤンデレ女怪盗 (1600字)
あら、目が覚めましたの?
お姫様。
そんなに警戒なさらなくても
大丈夫ですよ。
今はまだ何もしませんもの。
ここは、どこか?
私の秘密のアジトですよ。
少々強引だったかもしれませんが
お姫様を私のアジトにご招待させて頂きました。
そうですわね
たしかに招待というよりは
誘拐という言い方のほうが
正しいかもしれませんね。
まだ、他に聞いておきたいことはありますか?
私に答えられることでしたら
何でも答えてさしあげますよ。
宝石を盗むんじゃなかったのか?
さて? 私はそんなこと
一言も言ってなかったはずですけど。
ちゃんと予告状に書いておいたでしょう。
お城の中で、一番美しいものを盗むって。
だから、お姫様を盗んだんですよ。
あのお城で、一番美しいものといえば、
お姫様に決まってるじゃないですか。
お城にいるのが
お間抜けな兵隊さんばかりで
本当に助かりましたよ。
宝物庫の宝石ばかりを
厳重に警備してたみたいですね。
勘違いをしてくれたおかげで
お仕事が楽にできたので
すごく助かりましたよ。
あなたを誘拐した理由ですか?
なんだと思いますか?
当ててみて下さい。
あなたのお父上である、国王さまに
たくさんの身代金を要求するため?
そんなつまらない理由では
ございませんよ。
それでしたら
はじめから金銀財宝を盗んでいますよ。
それにお金やお宝は
もう十分なほどに持っておりますので
これ以上欲しいとは思いません。
この部屋を見て下さい。
私のアジトには
王国の宝物庫にもないような
貴重で美しい宝石がいくつも飾ってあります。
自分の盗みの腕だけで
これだけのものを手に入れてきました。
こうやって美しいものに囲まれての生活は楽しいです。
いえ、楽しかったです。
楽しかったのですが
しかし
私はまだ満足できていませんでした。
それで
ふと思ったんです。
もっと難しいものを盗んでみたいと。
簡単には盗めないものを盗んでみたい。
それで思いついたんですよ。
お宝以外のものを盗んだら
きっと楽しいんじゃないかって。
国のみんなから愛されるお姫様を
私だけのものにしたら
どれだけ幸せだろうかって。
そうですよ。
国王さまと何か取引をするためではございません。
初めから言っているように
あなたのことを手に入れたかったので
そのために誘拐したのです。
お姫様には
これからずっとずっと
私のアジトにいてもらおうと思いましてね。
あら、お姫様。
怖くなったんなら
泣いたっていいんですよ。
悲鳴を上げてもいいんですよ。
私のものになんか、絶対にならない?
本当に、かわいいわ。
泣きそうな顔で
そんな強気なことを言って。
さすが
私が手に入れてみたいと
思った女性ね。
ここで震えて泣き出すような
か弱い女性なら
何も面白くないもの。
簡単には私のものになってくれないからこそ
どうやってお姫様を落とすか考えていると
胸がおどるわ。
今は敵意をむき出しのお姫さまが
私に甘えてくれる、その時が
本当に楽しみです。
さて、たっぷり時間はあります。
今夜は楽しい夜になりそう。
そうですよ
本番は今から。
私はまだお姫様のことを
盗み終わっていません。
本当に盗むのはこれからです。
さあ
お姫様を私だけのものに
してさしあげますね。
私は怪盗なのですから
何の美学もない、ただの泥棒ではないんですよ。
美しい鳥を
鳥かごの中に閉じ込めて終わりにはしません。
鳥のほうから
ずっと、ここにいたいと思えるように
甘い餌をたくさん与えてさしあげます。
たくさん気持ちよくして
あなたの心まで盗んでさしあげますよ。
覚悟してくださいね




