記憶喪失の男子に嘘をつくヤンデレ幼馴染(1400字)
え?
私のこと覚えてないの?
……いいよ、そんな謝らないで。
しょうがないよ。
記憶喪失だもんね。
でも、命に別状がなかったのは、本当によかったよ。
体は痛いところない?
あなたが事故にあったって聞いた時は、本当びっくりしたよ。
本当もう泣きそうだったんだから。
もし、あなたが死んじゃったら、どうしようって。
すっごくすっごく心配で。
生きててくれて、ほんとよかった。
記憶もきっと大丈夫だよ。
ゆっくり思い出していけばいいじゃん。
学校の友だちだって、
あなたが何も覚えてなくたって
優しく受け入れてくれるよ、きっと。
みんな、あなたのこと、大好きだから。
私?
私はね、あなたの幼馴染だよ。
家が隣でね、
幼稚園ぐらい、……だったかな?
それぐらい小さい頃に初めて会って。
それからずーっと一緒だったんだ。
あなたってば、昔からおっちょこちょいなところがあったから
私はいつもハラハラしてたんだよ。
でも、嫌じゃなかったよ。
あなたといるといつもドキドキして楽しかった。
……あのね、
……実はね、
私、あなたの彼女だったんだ。
彼女がいるなんて、家族から聞いてない?
……うん、そうだと思うよ。
だって、まだ付き合い始めたばっかりだったし、
学校の友だちにも、家族にも隠してたからね。
私はみんなに言っても良かったんだけど
あなたが友だちにからかわれると
恥ずかしいからって言うから
みんなに秘密にしてたんだよ。
もー、だから、そんなに謝らなくなっていいって言ってるでしょ。
そりゃあ、恋人だし、忘れられたのはちょっと寂しかったけど
べつに忘れちゃったのは、あなたが悪いわけじゃないんだから。
今までのことよりも、これからのことを大事にしたいし。
もし楽しかったこと思い出せなくてもね、
あなたが生きててくれたら、
これからいくらでも思い出、作れるからね。
……それでもやっぱり、私のこと思い出したいの?
うん、わかった。
でも無理はしないでね。
じゃあ、私のこと、たくさん教えてあげるね。
そしたら、私のこと思い出すきっかけになるかも。
でも、何から話そうかな?
まず、好きなものは、甘いものでねー、ケーキとドーナツが好き。
スイパラデートも一回だけしたことあったよ。
でも、あなたが甘いものばっかりは嫌だって言って
一回しか行ってくれなかったんだよ!
せっかくだし、その時のスイパラ、また今度行ってみる?
実際にお店に言ったら、その時のこと思い出すかもしれないじゃん。
べ、べつに甘いものが食べたいだけじゃないし。
でも、デートは基本、家デートが多かったかな。
あんまりお金ないし。
あなたの家か、私の家で、映画みたりー、ゲームしたりー。
一緒に映画見てたら、あなた、すっごく泣けるシーンで寝ててね。
脇腹くすぐって無理やり起こしたら、
なぜかあなたも私のこと、くすぐってきて
映画見てたはずなのに、くすぐり合戦になったりしてね。
で、その後……、
……って、これはさすがに恥ずかしいから、言えないかな?
(語尾をごにょごにょした感じで)
いや、別に恥ずかしいことしてたとかそーいうわけでもないけど
もぅ、バカ……。