違う女の名前で呼ばれて、豹変する彼女 (900字)
ねえ、さっき、私のこと、なんて呼んだ?
さより、って呼んだよね?
なんで誤魔化そうとするの。
わたし、ちゃんと聞いたよ。
絶対、さより、って呼んでた。
ねえ、どうして、私とさよりちゃんを間違えたの?
たまたま呼び間違えただけ?
本当に?
あなたって、
最近、さよりちゃんと仲いいよね。
みんなで一緒にいる時もさぁ、
さよりちゃんとばっかり話してるよね。
絶対、気のせいじゃないよ。
私以外で、そう思ってる子もいたよ。
『アレおかしくない?』って、心配もされたし。
ひょっとしてさ、
私に内緒で、
さよりちゃんと二人だけで会ったりしてない?
そんなことないって?
本当に?
嘘、ついてない?
あなたって嘘つくとき、
目が右のほうに泳ぐよね。
今もそうだったよね。
おれのことが信じられないのかって、言われても。
あなたの態度が怪しいのが、いけないんだよ。
わたしだって、あなたのこと
こんな風に疑いたくないよ。
あなたのこと、信じていたいよ。
でもさ、ただの友だちにしては、
あなたと、さよりちゃんって、仲よすぎじゃない?
だって、さっき間違えた時だって
呼び捨てにしてたよね。
後輩だから呼び捨てにしてるだけ?
…………ふーん。
ねえ、ちょっとスマホかしてよ。
いいから。
スマホ見せて。
……見せなさい。
いま、充電切れてるの?
いいよ。
充電切れててもいいから
スマホかして。
……充電、残ってるじゃん。
あのさ、
ちょっと、ここで待ってて。
え?
大丈夫、すぐ戻るから。
台所に、必要なもの、取りに行くだけ。
【間(5秒~10秒)】
お待たせ。
どうしたの?
顔ひきつってるけど、大丈夫?
……ああ、これのこと?
もしかしたら、必要かなーって思って
一応、持ってきたんだけど
別に、使うつもりはないよ。
あなたが正直に言ってくれたら。
だから。
ちゃんと嘘つかないで答えてね。
あなた、さよりちゃんと浮気してるの?
……そう。
……やっぱり、そうだったの。
ありがとうね、正直に言ってくれて。
じゃあ、
バイバイ




