おともだち。
「ないって…どういうこと?」
あれから数時間。
とりあえずあやふやな感情諸々を維持しながら、
とりあえず突然現れた怜夏の話を聞いていた。
彼女についてまとめてみた。
・魔法使いの娘(自称)
・見習い魔法使い(自称)
・でも魔法はあんまり得意じゃない(…)
・お使いに行く途中だった(お財布を首からかけていたのでなんとなく察し)
・中学生(理解)
・髪色は昔、何故か白銀になった。(謎)
と、もはや謎に謎を重ねたような女の子だった。
気がつくと、時計は3時を回っておりお腹が空いたので、一階に降り冷蔵庫を開けてホットケーキを作ろうとした。
「さやちゃん家って、二階建てなんだ!!すごーい!」
「怜夏ちゃん家はー?」
「うん、うちはねー、平屋っていうのかな?1階しかないなー」
「平屋?縁側とかあるの!?」
「縁側?あるよー!」
「いいなぁ…私、引きこもりだけど、縁側に座りながら、太陽の下でお昼寝とか…してみたいなぁって思うこともあるんだよね」
「うんうん、なかなかいいものだよ…でも、昔夏休みにそれやってたらお母さんに「日焼けするぞ」って言われて〜」
「あ…日焼けか…んー…じゃあやっぱりお家の中でいいかなぁ…」
と、何故かお家トークを繰り広げていった。
「でも、久しぶりだなぁお家に家族以外の誰かが来るの。」
「?」
「あ、私ね、さっきもこそっと言ったけど…あんまり…人付き合い上手じゃなくて…学校にもいってなくて…」
「そうなの…!?」
「うん…」
「じゃあ、私がさやちゃんのお友達になるよ!」
「…いいの?私…こんなかんじだし…」
「うんうん、だって、この世界じゃ私さやちゃんしか知らないのに、唯一のさやちゃんが他人っていうのもなぁ。お友達として、仲良くしてくれると嬉しいな(*´罒`*)」
「…ありがとう…あ、そこのおたまとって」
「はーい」
「いっただきまーす!」
「いただきます」
「ん、!これは!!!おいしい!」
「ありがとう…」
「ふわふわだねぇ、うん、おいしい!」
「怜夏ちゃんはお料理しないの?」
「私がホットケーキを焼くとね…くろおおおい煙がもくもくと…」
「あ…」
「というわけで、お母さんに台所出入り禁止にされています!」
「そ、そうなんだ…」
「うんうん」
そして、ホットケーキを食べ終わると、仲良くお互いの家族のことを話しながらお皿洗いも済ませ、再び部屋に。
「そういえば、この世界には魔法はないんだっけ」
「魔法…ってそれ二次元の世界限定かと思ってたよ…」
「えー!火とかでないの!?」
「む、無理だよ…」
「まぁ、わたしもお母さんも火は出せないけどね」
と、ここで1階から声がする。
「さやー!帰ってきたよー!」
「頼まれてたワーク、買ってきたから取りにきなさーい」
「あ、お母さんだ。」
「ど、どうしよう、私隠れた方がいい!?」
「えっ…と…」
とりあえず、さやは一人で階段を降りワークを取りに行く。
「さや、なんか作ってたの?」
「うん。ホットケーキ」
「おやつを作るなんて珍しいわね。」
「うん…」
「はいこれ。頼まれてたやつ。」
「ありがとう」
「…そろそろ夏休みなんだし、気分を切り替えて学校に行ってみる気持ちになってみるのも悪くないと思うけどなぁ。」
「…うん。」
「…1度限りの一瞬の青春よ。…どんな形であれ、後悔だけはしないようにしないと。」
「…わかってるよ。」
「まぁ、勉強だけは頑張ってるみたいだし、高校に行ければ…いや、高校に行くのにも、今から学校に行く習慣はつけておいた方がいいんじゃない?」
「…そうだね…夏休み明けは頑張ってみよう…かな。」
「うん。まぁ、あんたなりに受験までに色々考えなさい。」
話を終えて、階段を上がると怜夏がいなかった。
「あれ…?」
ドアを開け、外を見るといなくてまた部屋に入るためにドアを開ける。
「お母さん、大丈夫そう?」
今度はどこから現れたのかベッドの上に座っている。
「あ、怜夏ちゃん」
「今ね、透明になってたんだけど、もしかして見えてないかなぁ、と思って…」
「…」
「…」
沈黙が続いた後、怜夏は再び透明になる。
体がすぅっと後ろの家具の風景に溶け込んでいき、見えなくなる。
そしてじんわりと元に戻って見えるようになる。
「どう…?」
「…れ、怜夏ちゃんって…何者…?」
「え?普通に中学生だよ?」
「…いや、そうじゃなくって…おうちは手品師か何か?」
「あっ、そのリアクション割とよくあるんだけどー、私は魔法使いです!見習いだけど!」
何も言わず、きょとんを怜夏を見つめる。
さて、怜夏のことは家族になんて話すべきだろうか。