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第九章 モンスターが生まれる日(三)

 等々力は普段の調子で答えた。

「今はね。だけど、いつまで等々力を続けるかは、わからない」

 ガニーが周囲を警戒しつつ、感想を述べた。

「一杯、まんまと喰わされたわけだ。ここなら、狙撃する位置に事欠かないな。装備を持って暗闇に潜む狙撃手を三人も準備しておけば、俺に逃げ場はない。そういう手筈か」


 逃げ場はないと認めたわりに、死を覚悟している空気はなかった。雰囲気から推察するに、仮に狙撃手が三人いたとしても、逃げ切る自信があるのだろう。

 等々力は傲慢な態度を装い、尋ねた。

「最初は殺すつもりだったが、気が変わった。君はそれなりに優秀な人材のようだ。どうだ、我々の駒になる気はないか」


 ガニーが等々力を鋭く睨みつけ、返事をした。

「断る。俺にも組織に対して義理がある。それに、どこの誰ともわからない人間と一緒に仕事をする気には全然なれない。特に身分を偽り、ころころ態度を変える人間は信用できない」

 予想通りの答が返ってきた。

 等々力は幾分か芝居がかった口調で「では、しかたがない」と口にした。片手をゆっくりと上げて、天を指差した。


 ガニーが懐に手を入れたが、銃を取り出したときには、等々力は上空に飛び上がっていた。

 驚き等々力を見つめるガニーを見下ろして、悠然と言葉を掛けた。

「もう、我々を追うな。警告は一度だけだ」


 ガニーが訝しげに等々力を睨んで「もう、派手な警告を貰ったが」と口にした。

 等々力はチョウ大人の空気を纏って、見下して発言した。

「図に乗るなよ、小僧。お前ごときに警告をするのに、あそこまで手の込んだ仕掛けは絶対しない。先日のは、我々の付近を嗅ぎ回る、アメリカとイギリスの犬共に対して行った警告だ。私はお前の相手だけをしているのではない」


 ガニーは大きな声で叫んだ。

「なら、最後に教えろ。結局、お前はいったい何者だ」

 何者だと問われても困る。本性はただの大学生だ。

 だけど、たとえ正直に話しても、ガニーが納得しないのは間違いない。なら、もっと大風呂敷を広げてやれ。


「いいだろう。特別に教えてやろう。ある時は、織田信長。ある時は、明智光秀。またある時は、徳川家康。戦国の世より、この国の歴史が動くときに陰から支えてきた一族だ。あえて名乗るなら、ファントム・オブ・ヒストリーとでも名乗っておこう。まだ、私を追うというのなら、イラクに来い」


 等々力は両手を大きく広げ、片方の手で布を掴んで一気に引っ張り被った。これで、ガニーからは、姿は見えなくなったはず。

 柴田が背中を軽く叩いてから、背中の仕掛けを外してくれた。


 等々力は足音を立てないように布で姿を隠しながら、確認した経路を小走りに走った。

 途中で転びそうになったが、なんとか左近と合流して、動物園の裏口から逃げるように出て行った。

 念のために隠家のウィークリー・マンションに帰らず、左近に偽名でとってもらったホテルに移動した。


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