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第八章 伝説は蘇る(四)

 翌日に左近からシナリオが聞かされた。

「等々力君は動物園でアルバイトをしていた。象の檻に入って清掃をしていたところ、象が驚いて等々力君を踏み潰して圧死。慌てた園長が、裏社会の人間に事件の揉み消しを依頼。裏社会の人間は等々力君の死体を始末して、等々力の戸籍を私に売却。謎の人物が等々力に成り済ます形になったわ」


 おおよそ、考えて通りの形になった。後はガニーが筋書きを信じてくれれば、問題ない。

「では、最後に謎の人物は怪盗グローリーを演じた後、イラクのファルージャに帰ったように出国記録を作る偽装工作をしてください」

「いいわよ。でも、イラクに入ったあと、謎の人物の足跡は途切れるわよ」


「いいんです。イラクに俺に似た人がいるそうですから、勝手に勘違いして追うでしょう。軍曹は、きっとしばらく無駄足を踏んだ後、組織に戻りますよ」

 勝手に捜査を進めた軍曹がイラクに旅立てば問題ない。後は黙って、ウィークリー・マンションでゲームでもしながら、時間を潰せばいいだけ。


 等々力はゲームのコントローラーを握ると、計画はそう簡単にはいかない気がした。

「念のために、もう一工夫しておくか」

 等々力はアントニーに電話をした。すると、アントニーがすぐに出た。

「取引がしたい。一つ、売って欲しい物があるんだけど、いいか」


 アントニーは、もったいぶって答えた

「おかしいな。以前、君からは動かなくていいって、言われた気がするんだけど、あれは聞き間違いかな」

「前はもうこれ以上、関与して欲しくなかったけど、状況が変わった。欲しいものは、トリックなんだ」


「トリック」と聞いて、アントニーが興味を示してきた。

「それは、僕に何かを盗んで欲しいって依頼かい」


「怪盗が消えたのは間違いない。俺が欲しいのは、話している相手の前で、空中に十mくらい飛び上がって、忽然と空に消える。それでいて、後に証拠が残らないトリックだよ。怪盗をやっているアントニーなら、持っているかと思ってね」


「なるほど。マジックの種は、マジシャンの間で取引されている。僕もマジックが好きで、いくつか買ったよ。でも、観客と目の前で話している状況下でマジシャンがいきなり宙に浮いて忽然と消えるトリックは、記憶がないな」

「なら、作ってくれ。費用は百万ドル出そう。百万ドルでは安いというなら、売るのはトリックを一度だけ使う権利と考えてくれ。トリックの権利はアントニーにある、で構わない。どういう仕掛けになっているとか、詳しく教えてくれなくていいから。要は俺が空中に飛び上がって消えればいい」


「難しいね」と返事をしたアントニーだが、難しいから挑戦したいという雰囲気があった。

 挑発する意味で「アントニーでも無理か」と囁いてみた。

 すぐに「難しいが、やってもいいよ」と乗ってき。

 アントニーのトリックが完成すれば、最悪、ガニーと対峙する場面になっても、逃走に使える。


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