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第五章 読み合いの末に(四)

 三日後、移動する車の中で初めて仕事の裏事情を聞いた。

 リーは、ホテルに来たIT企業の役員を狙っている。暗殺対象となった役員は、身を守るために、狙撃に来るリーの殺害をガニー依頼。

 だが、真実は違う。リーが引き受けた仕事は、ガニーを誘き出すための罠であり、企業の役員は偽者。役員はリーと通じている。ガニーがリーを狙撃する情報は、リーに漏れている。


 左近と等々力は清掃員に化けて、待機するビル一室に入った。リーの影武者として役員を狙える位置に、等々力と左近は向かった。

 リーに陣取るように指定された場所は、空室になっている一千㎡の広いオフィス。

 綺麗に清掃されたオフィスには、頑丈なスチール製の机が窓から二m離れた場所に一脚だけあった。机の高さはドラグノフを伏せ撃ちするにはちょうど良い高さ。準備段階として、リーの組織が用意してくれた物だ。


 窓からは街に沈む夕日が見えた。役員が食事会に来るレストランはビルの十二階。

 距離は等々力のいる場所から直線で百八十m。街中のビルが立ち並ぶ場所なので、天候がよくても、風はビル風が吹くので強目。

 役員が来る時間帯には陽は落ちているので、狙撃条件は今より悪い。とはいえ、鷹の目の異名を取るリーなら、それほど難易度が高い狙撃ではない。


 ガニーに狙撃された事態を考慮して、ボディ・アーマー、ウィッグの下に被れる金属のヘルメットを左近が用意してくれていた。防具を付けたほうが、生存率が上がる。

 ボディ・アーマーやヘルメットは今回の前提条件では、リーなら装着しない。

 等々力の本音としては装備したかったが、纏ったリーの空気が拒否していた。勘でしかないが、重たい装備を付けるより、リーになりきったほうが生存率が高い気がした。


 等々力は「必要ないね」とリーと同じ広東語のアクセントが混じった日本語で左近の用意してくれた装備を断った。「これだけあれば充分よ」と、リーの髪型をなぞったウィッグのみを被った。

 左近からドラグノフの入ったケースとマカロフPMを受け取った。最後にインカムを左近が差し出して教えてくれた。


「これで貴方の状況が、私にもリーさんにもわかるわ。何か異常があったら、連絡して。リーさんからの通信も入るから。リーさんから指示があったら、従って」

 インカムを装着して、気持ちを等々力に戻してから、リーに尋ねた。

「念のために確認しておきます。軍曹はリーさんの顔を見た過去がないんですよね」


「銃撃戦の中で二言か三言、言葉を交わしたり、電話で話したりした経験はあっても、顔を合わせて記憶はないね。実は私も、軍曹の顔は写真でしか見てないよ」

 左近が去り、日が暮れてきて、暗くなった。あちらこちらのビルに灯りが点き始めた。

 等々力は机の陰に隠れ時間が来るのを待った。


 日が完全に暮れた。時計を確認すると、ターゲット役の人間がやって来る時間になっていた。

 おもむろにドラグノフを取り出して、狙撃準備に懸かった。狙撃準備をしていると気管支に粘性の高い気体が詰まるような嫌な感じがした。


 等々力は正直に心境を告白した。

「なんか、嫌な予感がするある。喉の辺りの空気詰まって、苦しくなるような、嫌な感じある」

 等々力の言葉に、すぐにリーが反応した。

「それ、まずいかもしれないね。私に危険が近づいた時、そんな感じするね。作戦中止するあるか?」


 リーから作戦の中止を進言してくれるのは嬉しい。されど、リーが親切心で中止を申し出たのではない下心は、理解している。リーは前日のスーパー・ショットを見ている。

 リーにしてみれば何か理由をつけて、等々力に貸しを作っておきたい。それでもって、リーですら不可能な、もっととんでもない仕事に等々力を投入したいのだろう。


 冗談ではない。そんな手には、乗らない。

 等々力は陽気な声で返事した。

「心配無用ね。仕事が危険なの、いつも一緒よ。私どんな、危険な仕事もこなしてきたね。今回も任せるよろしい」


 リーが陽気に応答してきた。

「そうか、なら任せるね。でも、お前と話していると、なんか妙な感じするね。まるで、自分の家に間違って電話したら、いるはずない自分が出たみたいね。奇妙は感覚あるよ」


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