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ネームレス・ハンター  作者: 色条 黒
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名前の無い狩人

どうも皆様、初めまして!最近登録したばかりの新人です!

至らない点も多々あるかと思いますが、楽しんで頂ければ幸いです!

それでは本編始まります!



空が雨雲に覆われ、雨が窓や屋根に激しく打ちつけられる音が部屋の中に響く。折角の日曜日だというのに天候は最悪だ。しかも台風26号が接近中という予報付き。気が滅入るのも仕方なかった。

サッとカーテンを閉めて机に向かい、パソコンを起動する。

カーソルを動かしてとあるゲームのアイコンをダブルクリックし、画面にIDとパスワードの入力画面が現れる。

素早くIDとパスワードを入力し少し待っていると、『welcome to nameless hunter!』と表示されタイトル画面に移動した。メインメニューからフレンドを選び、たった一人だけのフレンドがログインしている事を確認して恐らく一人でずっと俺を待っていたであろう人物にボイスチャットを送る。


『わりぃ、待たせたか?』


『ん、大丈夫』


『そうか。すぐに行けるか?』


『行ける』


『おけ、じゃあ招待送るぞ』


ピコンという音と共にその人物───幼馴染みである森嶋 芹那へとゲームの招待を送る。するとすぐに参加メンバーの欄に『nameless 22541』という名前が追加された。

今俺達がやろうとしているゲーム、『ネームレス・ハンター』はPVP(対人戦)を主力にしたオンラインゲームだ。このゲームはキャラメイキングの自由性が高く、キャラの種族も豊富な為にキャラメイキングが一番時間が掛かると言われているゲームだ。実際このゲームのキャラメイキングに本気で取り組んだ人も少なくは無いだろう。かくいう俺も少しばかり真面目に取り組んだ覚えはある。余談だが、芹那のキャラクターはめっちゃ本人よりだった。芹那に聞いてみると「何となく作ったらこうなった」と言っていた。

因みにこのゲーム、他のゲームと違いキャラクター名の設定が無い。キャラクターを制作し登録した時点で『nameless+数字』で名前が登録される。俺のキャラ名が『nameless 22513』で、芹那のキャラ名が『nameless 22541』だ。

次に種族についてだ。と言っても種族に関してはマジで多いのでポピュラーな種族と俺達の種族を取り敢えず上げていこう。


・ヒューマン

安定したステータスを持ち、これと言った不利が無い。どんな武器でもそつなく扱える種族。ただし有利を取れる種族も無く、特に秀でた事も無い。


・エルフ

魔力のステータスが高く、魔法が得意な種族。杖や弓といった武器の適性が高い。ただし筋力や体力といった肉体的ステータスは他と比べてやや低め。後方支援向き。


・ビースト

肉体的ステータスが高く、白兵戦が得意な種族。白兵武器なら大概何でも使えるが、逆に遠距離武器は適性が低い。設定した獣によって伸びるステータスとアビリティが変わる。


基本的にこの三つが選ばれやすい。他の種族は変に癖があったり、使いにくかったりする。

それじゃあ次は俺と芹那の種族だ。先ずは芹那の種族だが


・ダークエルフ

エルフと違い、肉体的ステータスが高めな種族。エルフと比べて魔力に関してのステータスは少し低めだが、レベルが上がっていくにつれて魔力の伸びも良くなっていく。大器晩成型。


こんな感じだ。ゲーム始めは辛いだろうが、それを乗り越えた先に全体的に高いステータスに辿り着けるのが味噌だろう。

そして問題なのが俺の選んだこの種族だ。


・キマイラ

全ステータスが最低値であり、覚えている初期アビリティも一つしかない最弱な種族。適性武器も無く、殆どが不適性である。ステータスの伸び代も決まっておらず、どう成長するかは全てプレイヤー次第。可能性の獣。


……そう、最弱種族なのだ。どれくらい弱いかというと、ヒューマンに素手で一方的にボコられるくらい弱い。こちらが武器を持って戦っても、素手のヒューマンに返り討ちにされるくらい弱い。

一応アビリティ『合成因子』の効果で相手を喰らう事が出来れば相手のアビリティを一つ獲得出来るものの、そもそもキマイラはアビリティだけは警戒されているので速攻で潰される。

ネットでのキマイラの評価もメチャクチャ低い。戦闘が始まれば真っ先に潰されるのもキマイラだ。潰しやすさが断トツだから仕方無いと言えば仕方無い。PVPは三対三で行われるので、数の暴力はやはり驚異なのだ。味方からしてもすぐに潰される仲間など邪魔でしかない。そんな負の伝説があるからこそ、キマイラをプレイしたプレイヤー達はアカウントを消去し改めて別の種族をプレイし始めるのだ。俺も始めはクソ種族だと決め付けてアカウントを消去しようとした事があった。

だが、アビリティの詳細をよく確認してとある事に気付いた。

例えばこのアビリティ。


・アビリティコピー

解析した敵のアビリティをランダムに一つコピーする。戦闘終了後にコピーしたアビリティは失われる。


これは一部のヒューマンが使えるアビリティだ。効果は戦闘終了まで相手のアビリティを一つコピー出来るという強力な効果だ。

それではキマイラのアビリティを確認してみる。


・合成因子

捕食した遺伝子を取り込み、取り込んだ対象のアビリティをランダムに一つ獲得する。ステータスの基礎値もランダムに上昇する。


……お分かり頂けただろうか?

このゲームは相手に使用するアビリティは必ず『相手の/相手に』といった感じに表記されるのだ。

しかしこの『合成因子』にはその表記が無い。つまり『このアビリティは必ずしも相手に使う必要はない』ということだ。

これを理解してから一度、味方で試した事がある。喰らったのはネームレス・ハンターの世界で神速と話題のプレイヤーだ。そのプレイヤーのキャラ種族はビーストで、敏捷のステータスを底上げしていたのはネットでも有名だった。捕食を行う上で敏捷のステータスは必要不可欠だ。敏捷のステータスの基礎値が得られる事を願い、味方になったそのプレイヤーが敵と戦闘中の時を見計らい捕食した。敵味方共に唖然としていたものの、数秒で殺されてしまったのでメインメニューに戻りステータスを確認すると、明らかに敏捷のステータスが伸びておりアビリティも獲得することが出来たのだ。

それ以来、俺は敵味方問わず喰らい続けてきた。そのお陰で俺のキャラのステータスは以上なまでに伸び続け、数多のアビリティを保有するようになった。沢山の罵倒チャットも送られてきたし、味方から率先して狙われるようにもなっていた。ネットではキマイラのチート性が叩かれるようになり、運営に直談判する奴も出てきていた。しかし未だに運営からの返答も無ければ調整も入らず、多くのプレイヤーはクソゲーと評して止めていった。

けれど何故かこのゲームに入り込んでくる人間も多く、復帰勢もちょくちょく出てきているのだ。


因みに、これ程までに成長出来たキマイラは未だに俺しかおらず、俺と同じように成長しようとする奴は率先してボコられていた。芹那が始めていなかった時は基本的に五対一だ。そこから一人勝ちした時の気持ち良さは断トツだった。

強きを喰らい、弱きを踏み躙る。俺はそんなキマイラが好きで仕方なかった。


メンバーマッチングの待機画面を眺めながら芹那とボイスチャットを続ける。何気にこの待機時間が少し長かったりする。まぁあちらこちらで三対三が行われていると考えれば仕方無い。メンバーによってはすぐに戦闘が終わってしまう可能性もあるのでメンバーの入れ替わりも激しいのだ。


『今日は待機時間が長いな。台風が近付いてきてるからか』


『多分』


『……なぁ、そろそろ大学に顔出さないか?』


『嫌』


『……はぁ』


俺こと『神薙 荒斗』と芹那は同じ大学だが、芹那は友人関係が拗れてしまい引きこもりになってしまった。俺は友人と呼べる奴が一人もいないのでよく分からないが、友人関係の拗れというのは見ただけで分かるほど面倒くさいのだろう。ボッチ万歳。

それでもこのまま芹那が引きこもりになっていると俺としても都合が悪いのでそろそろ復帰してもらいたいものだ。

そんな事を考えていると、ピコン!という音と共に参加メンバーが増えた。どうやら漸くマッチングしたようだ。名前は『nameless 22567』。俺達よりも若い番号だ。すると『nameless 22567』からボイスチャットが飛んできた。


『オッス!宜しくな先輩方!』


『よろしく』


『ん』


『もしかしてnameless22513ってネットで噂のキマイラ?』


『おう。多分それだ』


『スッゲー!俺、nameless22513のファンなんすよ!後でフレンド申請送っていいっすか!?』


『……まぁ、別にいいけど』


『やったぁ!ありがとうございます!』


何とも愉快な奴だ。今時悪役のレッテルを貼り付けられる俺のファンだなんて珍しい。居ないことは無いが、極少数なので久しぶりだ。余談だが、ファン第一号は芹那だったりする。


そうこうしている内にフィールドへと移され、ゲームが始まる。

今回のフィールドは『黄昏の古城』と呼ばれるフィールドだ。古めかしい巨大な城が舞台であり、城の外に出るとフィールドエネミーに襲われる仕様だ。基本的に城の中で立ち回るのだが、そんな基本に忠実になる必要はない。


『nameless22567は後方支援、nameless22541は俺と一緒に前衛だ。いつも通り蹂躙すんぞ』


『ん』


『りょ、了解!』


二人を連れて城の中を駆ける。徐々に加速する俺と芹那に追い付く為に懸命にnameless22567が走っている。どうやら彼は加速系のアビリティが無いようだ。別にいてもいなくても変わらないので構わずに置いていく。俺が勝てればどうなろうと構わない。

気配感知のアビリティで索敵していると、少し離れた位置に反応を二つ確認した。敵の編成が分からない以上戦闘を長引かせるのは悪手だ。速攻で潰すに限る。

敵二人が潜伏している部屋の扉を殴り飛ばし突入する。すると部屋の中で魔法陣を描いていたエルフと両手剣を装備したヒューマンがいた。


『な!速い!?』


『はぁ!?まさかあれってキマイラか!?クソ!最悪だ!』


ヒューマンが愚痴りながらも両手剣を構える。にしても初見でよく俺がキマイラだって分かったな。全身鎧で見た目は分からない筈……あ、尻尾隠して無かったわ。


『お前は続けろ!俺が時間を稼いでやる!うぉぉぉ!』


『駄目!あのダークエルフは!』


『……主に剣を向けるな。死ね』


両手剣を俺に向かって振りかぶった瞬間、芹那が俺の前に躍り出て槍で両手を横凪ぎに切断した。両手を失いバランスを崩した所に芹那は槍で喉を一突きし、ヒューマンは呆気なく死亡した。

エルフはすっかり戦意を喪失し、魔法陣を描くのを止めて撤退しようとしていた。


『おいおい、あんただけ逃げるのは不公平だろ?』


『ひっ!』


瞬時にエルフの前に回り込み、頭を掴んで持ち上げる。俺のキャラの身長は2m弱、向こうの身長は160いかない位だ。俺の筋力ステータスも相まって持ち上げることは造作もない。


『や、止めて……食べないで……』


『あ?別に喰わねぇよ。あんた弱そうだし。エルフのアビリティでこれといった欲しいアビリティもないんでね。普通に潰すわ』


尚も言葉を紡ごうとするエルフの頭をリンゴを潰すかのように握り潰す。当然頭をやられたエルフは死亡し、フィールドから消えていった。残るは一人だが……


『こちらnameless22567っす!こっちは一人やっつけたっす!』


『マジか。こっちも二人片付けた』


『流石あの伝説のキマイラ!メチャクチャ速いっすね!』


『うち一人はnameless22541の手柄だ』


『ん』


にしてもおかしい。普通なら片方のチームが全滅した時点でリザルト画面に戻される筈だ。しかし戻る気配が一切無い。


『……あのう、なんかおかしくないっすか?リザルト画面に戻らないんすけど』


『俺もだ。nameless22541は?』


『私も戻らない』


『バグっすかね?』


『こんなバグは聞いたこと無いが……』


『まぁ台風も近付いてきてるし、そのせいかも────』


ブツっという音とがしたかと思うと、nameless22567のボイスチャットが途切れた。不審に思いメンバーリストを確認すると、残っていたのは俺と芹那だけだった。他のメンバーの名前は全て消えている。


『なんだ?何が起こってる?』


『……怖い』


『ちっ、俺から離れるなよ!』


『ん……』


なるべくお互いの背を庇うように背中合わせになり、辺りを警戒する。もしかすると新種のレアエネミー出現イベントかも知れない。だとすると逃すには惜しい。戦闘中に出現するレアエネミーは倒すとレアアイテムを落とす仕様になっており、そのどれもが強力なアイテムな為に逃すと後悔する。メチャクチャ後悔する。

ただ、今回は自棄に嫌な予感がしていた。ゲーム的な意味ではなく、生命的な意味でだ。

マウスを握る手に力が入る。ヘッドホンから入ってくる音を聞き逃すまいと集中する。画面のちょっとした変化を見逃さないように画面をジッと見つめる。


すると、ピカッと窓の外が青白く光り雷が近くの電信柱に落ちた。一瞬にしてブレーカーが落ち、部屋の明かりが消えた。しかしパソコンの明かりは健在である。


『わり、ブレーカーが落ちた。ちょっと上げてくる』


『私も』


少なからず明かりがあることに安心し、ブレーカーを上げるために懐中電灯を手に扉を開けようとする。しかしドアノブは回るものの、いっこうに扉が開かない。鍵を掛けた覚えもないし、そもそも俺は一人暮らしだ。誰かが鍵を掛けただなんてこともない。


「くそ!何で開かねぇんだ!」


扉を壊す覚悟でタックルをするも、扉はびくともしない。

嫌な汗が背中を伝い、急いでヘッドホンをつけ直してボイスチャットを繋ぐ。


『芹那!いるか!』


『荒斗……』


『こっちは何でか扉が開かないんだ!お前のほうは大丈夫か!?』


『……んん、こっちも開かないよ……怖いよ……荒斗ぉ……』


ちくしょう!まさか芹那の方も開かないのか!

窓ならどうだ!?


『芹那!窓は開くか!?』


『……ん、やってみる……』


俺も急いで窓際に駆け寄り、カーテンを開き窓を開けようとする。しかし窓も扉同様びくともせず、椅子で窓を割ろうとしても全然割れない。ふと向こう側に視線を移すと、芹那もまた必死に窓を開けようとしていた。しかしどうやっても開かない窓に拳を打ち付けると、涙目で此方を見てきた。


「何なんだよ……!ふざけんなよ……!あいつが泣いてんだよ!邪魔すんな!!」


何度も窓に拳を叩き込むが、まるで強化硝子のように硬くなっている窓に勝つことは出来ず、逆に俺の拳が擦りむけて血が流れていた。次はハサミを叩きつけようとしたところで、ヘッドホンから甲高い鳴き声が響いてきた。芹那もそれを聞いたのか、泣きながらもパソコンへと向かっていった。


「なんだ……?」


俺もパソコンに近づいて画面を見ると、イベントシーンが流れていた。

見たことの無い巨大な白竜だ。古城よりも巨大な白竜の背中には翼の代わりに日輪のような輪が浮いており、両腕には剣が生えていた。両目は布のような何かで縛られており、身体中に傷が残っている。


『クォォォォォォォン!!』


再び甲高い鳴き声が響き、画面に『emergency! world enemy! 』という文字が表示された。


「ワールド……エネミー……」


今はゲームをやっている場合ではないのはよく分かってる。助けを呼ぶのが先決だと。けど、何故か分からないが俺は左手をキーボードに乗せ、右手でマウスを握っていた。

こいつを倒さないと解放されない。そんな気がしたからだ。


『聞こえるか芹那』


『……ん』


『こいつをぶっ倒すぞ』


『え、でも……』


『頼む』


『……分かった。倒そう』


『よし!そんじゃあいくぜ!』


『ん!』


白竜はまるで此方の会話が終わるのを待っていたかのように待機していたが、会話が終わると再び雄叫びを上げて両腕の剣を振るう。するとたったの一撃で古城の上半分が消し飛び、風圧だけで体力の三分の一が持っていかれた。


『嘘だろ!?風圧だけでこれか!』


『足場作る!』


芹那の魔法で白竜の周りに円陣が出現し、足場を形成した。この魔法は対巨大エネミー戦に必須と言われている『エアースチル』だ。この魔法の足場のお陰で飛べないキャラも空中で戦う事が出来る。

すぐに足場に飛び乗り、力任せに白竜をぶん殴ると白竜が苦しそうな声を上げる。しかし然したるダメージではなかったのか、すぐに剣が振り下ろされそれを両腕で受け止める。


『はっ!冗談キツすぎるぞ!』


攻撃を受け止めただけで体力がごっそりと減り、HPは最早10も残っていない。俺の元のHPは9000ちょっとで、風圧だけで3000近くHPを失い、攻撃を受け止めただけで5900強持っていかれたのだ。普段のPVPでもプレイヤーが出せる最高火力は3000いくかいかないか位だ。出鱈目過ぎる攻撃力だ。


『荒斗に触れるなぁ!』


芹那が白竜に飛びかかり、頭に向かって槍を突き立てようとする。しかし白竜の背中の日輪から数本の光の剣が生成され、芹那に全て放たれる。芹那は咄嗟にエアースチルを生成し、そこを足場に飛び退くが回避しきれずに一本食らってしまった。


『嘘……こんな……』


たった一撃。たった一本の光の剣を食らっただけで芹那のキャラのHPは吹き飛び、一瞬にして0になった。芹那のキャラのHPは確か8500。それが一撃もらっただけで0になった。つまりあの光の剣の威力は少なくとも8500以上はあるという事だ。

芹那のキャラが倒れ伏し死亡アイコンが出現した瞬間、ヘッドホンの向こうからゴトッという倒れる音が聞こえてきた。


『芹那?おい芹那どうした!?』


『あ……らと……』


『芹那!芹那!くそ!待ってろよ!すぐにこいつをぶっ倒してやる!』


何とか剣を払い退け、縦横無尽にエアースチルを駆け回りながら攻撃を加えていく。先程のように苦しげな声は上げているものの一向に倒れる気配は無く、こちらは白竜の攻撃を食らったら即終了というベリーハードな難易度で戦っていた。

このままじゃジリ貧だ。いくつか最上級魔法をぶつけてみたがどれも決定打にはならなかった。


(なら……一か八かに掛けるしかねぇ!!)


白竜が剣を振り下ろした瞬間、咄嗟に横に跳んで攻撃を避けると剣を伝って白竜の体へと駆け昇る!

そして体まで辿りつくと、四肢と尻尾を駆使して白竜の体へ固定しヘルムを消す。そして思いきり喰らいつく!

すると白竜が今までにない位の声を上げ、体全体を使って俺を振り落とそうとしてくるが、構わず喰らい続ける。


俺が掛けた可能性。それは白竜を捕食し白竜のステータスとアビリティを得ることで、白竜と同スペックで戦うという可能性だ。

得られるステータスはランダムなので上手くいくかは分からない。だが今のステータスでは白竜に勝つことは不可能だ。ならば同スペックになるしか倒す方法は考えられない。


何度も捕食することでステータスがどんどん変動していく。最早全ステータスが異常とも言える程上昇しているが、ステータスの上昇は留まる事を知らずどんどん上昇していく。それに伴い見たことの無いアビリティも増えていく。


最早何度目か分からない捕食を行おうとした瞬間、白竜は光の剣で自分の体ごと俺を貫き振り落とした。そのまま空中を落下していると、複数の光の剣が俺の体を穿ちHPは無情にも0になってしまった。


「……結局俺は賭けに負けたのか……」


ドサッと古城に体を打ち付け、俺のキャラにも死亡アイコンが出現した。すると段々視線が揺れ始め、意識が遠退いていく。


「せり……な……わり……」


体に力が入らず、椅子から転げ落ちる。その際にパソコンが一緒に落ちて、ヘッドホンやマウスのケーブルが抜け落ちた。

薄れゆく意識の中で最後に聞いたのは、あの忌まわしき白竜の勝利の雄叫びだった。





この度はこのネームレス・ハンターをお読み頂きありがとうございました!

よくありがちなゲーム転移だと思いますが、少しでも面白いと思ってくださる方がいればとても嬉しいです!

初めてのオリジナル小説ですが、少しでも皆様に楽しんでもらえるようにこれからも頑張ります!

良ければ次回も宜しくお願いします!

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