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「もっとはっきり頷かないとわかりませんよ。少年。ほら、こっちへきなさい。」
こっちこっちと手招きして呼び寄せる。こちらをしばらく見つめた後、彼は靴も履かずに靴下のまま外へ出てきた。そのままではまたしもやけになってしまうから、私は少年を膝の上に乗せることにした。膝に乗せた彼は、決して暖かくはなかったが、柔らかくて、とても小さい気がした。そうこうするうちに、なぜだか唐突に彼は少年に対して申し訳なく思った。なぜこんなことを唐突に思ったのか分からない。何に対して謝罪したいのかもわからない。はじめに少年を見捨てようとしたことだろうか。それとも殴り飛ばしたことか。しもやけの治療方法がよく分からず、痛い思いをさせていたことだろうか。
「君の名前は?」
少年は下を向いたまま答えない。ルーカスは少年の赤く色づき、リンゴのようなほっぺたに静かに手を当てる。その途端少年はびくりとして私の膝の上でさらに縮んだ。
「もう殴りませんよ。あのときは本当にすいませんでした。」
本当に、という強調は本当に便利なものだ。人はすみませんを強調したいとき、本当に、をつける。その強調の具合が強まるたびに、なぜか誠実さが、すみません、から消えていくような気がするのは私だけだろうか。本当に、という強調のなんと浅はかで、簡単なことか。
「僕の名前はロイスです。」少年は下を向いて答える。