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レンズや望遠鏡のファインダーの細かな調整や、小物の準備を終えても、まだ日は沈まない。
「ちょっと外に出てくるよ。」
ルーカスは少年に声をかけると、静かに外へ出ていく。顔を天頂に向けて、じっと空のもっと上を見つめる。視界に入る空には一筋の雲もない。見渡す限り真っ青だ。きっと今日の空は快晴だ。空のはるか上をぼんやり見つめていると、身体中の空気を吸い取られて、限りなく自分が薄く溶けていくような気がする。庭の隅に置いてある色あせたウッドチェアには椅子と同じ高さの雪が降り積もり、そこにウッドチェアがあることを知る人間にしか見つけることができないくらいまで雪に埋もれていた。ウッドチェアの雪をなんとかどけて座ると、扉から小さな茶色の目がこちらを覗き込んでいることに気がついた。こっちを変わらずじいっと見ている。最近、彼の目の焦点がだんだん彼の周囲の様々なものにあってきている気がするのだ。その証拠に、今小さな目は私の顔だけではなく外の雪の反射する日光の白さに目を細め、外の落ち葉が落ちきった木や、冬にもかかわらず黒い葉をつけている木を不思議そうにみて、彼の上に広がる広大な空を眺めている。いい傾向だと思った。
「こっちにきますか?」
少年はふっとこちらに目線を移すと、下を向いて頷いた。