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「あのお前が息子を連れてくるとはな。人生長く生きていると、不思議なこともあるもんだ。お前も誰かの親になれたんだな。」
「今日は、もう知っていると思うけど、私のレンズの点検と調整、私用にもっと度が強いレンズを購入して、ロイスの器具を作ってもらいたいんだ。」
「本当にいいんだな?」
「ああ。もうロイスは天文学に取り憑かれてしまってる。」
「お前のせいだろ?」
「そう。」
ルーカスと、おじいさんは短い言葉を交わし続けている。ルーカスも借りを作りたくないと言っていたし、話しながらお互いにこりともしないから、はじめは仲が悪いのかとも思ったが、そんなこともないらしい。ルーカスとおじいさんの間には、カインさんとルーカスの間の雰囲気とも違う、独特の緊張感と、気が置けない親密さが漂っていた。
「まあ、いろいろ聞きたいことがあるから、今夜は坊を置いてこい。飲みにいくぞ。」
「ああ。ロイス、宿で留守番してもらっていてもいいですか?」
「はい。」
「なんだ?坊は、小さい頃のルーカスみたいだな。雰囲気がよく似てるよ。」
おじいさんは僕の頭をわしゃっと節くれだった手で撫でると、僕にはわからない専門的な話をルーカスと話し始めた。しばらくかかるから、おじいさんに店の中を見ていると良いと言われた。店内を改めて歩き回ってみると、ルーカスが持っている器具の形とは違って、もっと小さかったり、簡素ながらも美しい装飾が施されているような道具がたくさん陳列してあった。




