52
ルーカスが便箋をめくる音だけがぱらりと室内に響く。
「ロイス、目の器具を作りに出かけましょうか。」
「え、あ、はい。」
もしかしたらもうロイスは、忘れているのかもしれないとも思っていた。僕を見つめるルーカスの目の中に机の上のオレンジ色のランプの明かりが揺らめいていて、ひどく綺麗だった。
「もしかしたら引き受けてはもらえないかもと思っていたので、良かったです。ただ、やはり、統一の視力検査を受けていないので、実際に君がこのレンズ製作者の元へ行かなければならないようですね。私も一緒に来ないとレンズを作らないと書いてありますし、ちょうど、私のレンズの再調整も頼みたいところだったので、一緒に行きましょうか。」
「すみません、ありがとうございます。」
「この手紙には、今はちょうど暇で、冬になるまでのこちらの都合がいいタイミングでくるように書いてありますから、そうですね、2、3週間して、旅支度をしたら、買いに行きましょうか。」
「はい。あの、ルーカス、僕の器具にかかる制作費を出すあてがまだ僕にはありません。本当にご迷惑をおかけして、申し訳ないのですが、あの、肩代わりしてもらってもよろしいでしょうか?」
「私もそうでしたから。もちろんいいですよ。そうですね、出世払いでお願いします。」
「はい。ありがとうございます。」
ロイスは安心したように微笑んだ。




