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やはり、1日では足と手の腫れはひかなかった。昨日は、野菜を多く食べさせるようにしたのだが、なかなか効果は出ないものだ。まあ、あれは食べさせたというか、口に突っ込んだというべきであろう。彼は結局自分でフォークとナイフすら掴まずに食事をしたのだ。
これには思わずルーカスも拾ってきたことを後悔しそうになった。彼はもはや犬でも猫でもないばかりか、ただの動物になってしまったのだ。
窓の外では相変わらず白すぎる雪が昼夜轟々と荒れ狂い、ガタガタと窓ガラスに叩きつけられている。その光景は、まるでこの家だけ、世界に取り残されてしまったかのようだった。そんな日は、空を見上げることもできないから、ルーカスは、機材のメンテナンスをし、羽ペンを削りなおし、紙の残部を見に行ったり、スケッチに赤や白、水色をつけなおしたりして、一日を緩慢に過ごした。そんな彼を茶色の髪をした少年はぼうっと見つめている。少年はしもやけが治って、だんだん普通に歩けるようになると、ルーカスがいくところすべてについてきた。キッチンから寝室、別館までくまなく。ミシミシという足音の後ろを、音もなく少年は追いかける。少年は、ブカブカの靴下を2枚がさねで穿かされていたから、足音も響かせず、黙って、てくてくついてくるのだ。