47
ロイスは、いつにも増して、真剣に勉強に取り組んでいた。いつもよりも返してくる答えのキレが良かったし、質問も多かった。これは、早めにロイスのための観測器具を作った方が良さそうである。
とりあえず、私が以前調整を頼んでいたレンズの製作者に手紙を送ることにした。とは言ったものの、今の私には、大学のコネなど一つもないただのフリーの天文学者、と言う3流の肩書きしかないから、果たして真面目に取り合ってくれるかどうかも分からない。あの気難しいじじいに頼み事など、私が生きているうちはしたくはなかったが、仕方がないだろう。あのじじいにどれくらいぶんどられるのか、不安ではあるが、私ができる最大限の礼節をわきまえた手紙と、返信用のお金もつけて手紙を役場から送った。
ロイスに初めて月を見せてから、早くも数週間が経とうとしていた。その間にも、ロイスは知識を吸収し続け、私のスケッチの手伝いや、彩色の時に使う色の調合などを行えるまでに成長していた。
ロイスは、私よりも目がいいかもしれないと思わせるような出来事は、これまでにも時計の修理や、ピクニックの時などにも何度かあったのだが、この前、それを決定付ける出来事があった。
あれはロイスに初めて星雲を見せた時のことだった。