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「ロイス、君はもっと小さなものを見てみたいですか。」
「はい。」
ロイスは断固とした視線をこちらへ向けて来た。いつもは柔らかな光を写している凪いだ湖面のような目に彼自身の決意を込めてこちらを見つめている。
「どうやら、私の言いたいことはもうわかっているようですね。その通りです。今現在、天文学者がおこなっている望遠鏡を用いた観測は大きく分けて2つあります。ひとつは、昨日私がやって見せた、大小2つ以上のレンズを使う方法。もうひとつは自分の目をもう一つのレンズだとみなして、望遠鏡と擬似的に一体化させる方法。もちろん両者にはメリットと、デメリットがあります。前者のメリットは、自分の目を傷つけずに済むこと。デメリットは、高倍率で観測できないこと。ですから、前者の方法は、主に地球に近い惑星や月を専門にする天文学者に使われたり、一般の人向けの教室で使われる方法です。それに対して、後者のメリットは、自分の視力によって、高倍率で天体の観測が行えること。そのデメリットは、いずれ自分の目が見えなくなることです。君は後者で観測をしたいのでしょうが、私はすすめません。」
ロイスは、静かに私の話を聞いていた。私が話し終わった後も、しばらく目を瞑り、考え込んでいるようだった。