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「その通りです。私の本を読んで知ったのですか?」
「はい。紙でしか知らなかったものが、こうして現実にもあって、本当に楽しいし、嬉しいです。」
ロイスは、いつもの冷静さをどこかへ放り投げて、早口でそう言った。
「そうですか。それは良かった。」
「あ。すみません、ルーカス。観測の邪魔をしてしまいました。」
ロイスは一旦冷静になったようで、申し訳なさそうに私の目を見てそう言った。月の白っぽい光が彼の髪の毛の色を覆い尽くして白に変えていく。
「別にいいですよ。もともと今日はそのつもりでしたし。それよりも、また月を入れましたから今度は私の講義付きで月の観測をしましょうか。」
「はい。」
夜の12時を回ったところで、ロイスとの観測は切り上げた。ロイスに今日も先にベッドで寝ておくようにいい、ロイスは名残惜しそうにしながらも、ゆっくりと本館の方へ戻っていった。私も天文薄明が訪れるまで星雲の観測をした後、いつもと同じようにロイスの寝ている寝室まで帰って、ベッドへ潜り込んだ。
ロイスとの天体観測を終えた翌日のこと。なんだか妙に目が冴えてしまって、いつもの目覚ましが鳴る前に起きてしまったらしい。隣を見れば、まだロイスがふうふうと寝息を立てて10歳相応のあどけない顔で、眠っている。