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本当にロイスは真面目な子だと思った。私が彼に何も伝えていないことの方が悪いのに、ロイスは、申し訳なさそうに私の方を伺いながら、自ら掃除を申し出てくれるのだから。
「いえ、細かな部品も転がっていることが多いので、ここは私だけで掃除をしますよ。そんなことは今はどうでもいいですね。さて、今から月にピントを合わせます。」
ルーカスはそう言うと、右目の金属製の器具を望遠鏡へカチリと装着して、望遠鏡の脇の銀色のネジを回しながら、大きな望遠鏡を少しずつ右へ動かしていった。あれほど大きな望遠鏡があんなに小さなネジ2つで動いていることがとても不思議だった。ルーカスはほんの少しだけ望遠鏡を動かした後、ルーカスの目に近い方のレンズのそばの、これまた小さい別のネジを少しずつ回してから、カチリと右目と望遠鏡を外して、僕を呼んだ。
「ロイス、こちらへ来なさい。早くしないと月が視野の外へ出てしまいますよ。」
僕は慌ててそちらへ駆け寄った。覗き込んだ望遠鏡の中には、月がいた。望遠鏡の中の月は、僕が今まで見て来た月よりもはるかに眩しかった。夜露に丸く映り込むおぼろげな月よりも、夏の夜よりも深い青々とした木々の影を作る月よりも、川の上に悲しそうに揺らめき、さざなみ立つ月よりも、雪を太陽よりも明るく照らす月よりも、そのどれよりも明るく、そして大きかった。そして、いつもよりも拡大された月のざらついた表面には、ルーカスに習った通りの月の地形が広がっていた。