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夜空を見上げて  作者: 森中満
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ロイスと連れ立って外へでると、私たちを天高く輝く夏の大三角形が迎えてくれた。夏の大三角形の他にも一際明るい天体がある。おそらく金星だろう。


「知ってますか?空にはね、月が2つある時期があるのですよ。」

「そうなんですか?まだまだ勉強しないといけないですね。」


ロイスのいいところは、知らないことを、知らないと言えるところでもある。私の昔の同僚の中には、自分の専門外のことなのにもかかわらず知ったような口をきいてくる奴がいた。そんな奴と話している時間ほど無駄な時間はない。私が元いた大学の教授がそんな奴で、顔をあわせるたびに嫌気がさしていた。その点、スポンジのように知識を吸収するロイスと話すのは楽しい。


「今夜空に上がっている金星は、満ち欠けをする天体なんです。」

「なるほど…。」

「まあ、月と金星は全く異なる天体なんですがね。」

「えっ。」


ロイスは空気が抜けたような目で私の方をじっと見ている。


「ルーカスも冗談を言うのですね。」


そう言いながら、ロイスが少し笑ったような気がした。


「さて、そろそろ別館へ向かいますかね。」


僕は、急いでルーカスの後を追った。別館へ行くのは僕がこの家へ来て、まだ日が浅い頃に一度ロイスについて行ったっきりだったから、なんだか懐かしい気がする。あれから、もう半年近く経つのかと思うと、とても不思議な気がする。

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