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ロイスに天文学をメインに教え始めてから、もう何週間も経った。その間に、私たちは2人で外にのんびりとピクニックへ行ったり、美しい春のぼやけた月を見に出かけた。ロイスは、朝露に濡れる心なしか今年の春は去年よりもおっとりとしている気がする。ぼんやりとした花曇りの朝はやくに、芝生に腰を下ろせば、まだつゆが降りている。標高が高い位置に住んでいるせいだろうか。もう春だというのに、少し肌寒い風が私たちを包むことがよくあった。去年よりも寒い機がするのは、きっと私だけではないはずだ。隣にいる人の暖かさが際立つ日々が一日、また一日とすぎてゆく。
ある時、私はロイスにものの買い出しを頼んだ。ロイスは、私と違って、この辺に住む人々と容姿が似ているためか特に目立ちもせず買い出しを終えたそうだ。
「ロイス、ドーランの人々に何か言われたりはしませんでしたか?」
「はい、特に。」
ロイスはやはり、聡明な子供だった。少なくとも私の知っている子供たちよりは。彼は、ドーランの少年たちとは異なって、外で笑いながら遊ぶこともなかったし、私に向かって駄々をこねることもなかった。子供が苦手な私にとってそれは幸運なことでもあり、同時にロイスには不運なことでもあっただろう。とても綺麗に保たれている彼の持ち物、特に彼の置き時計は日々輝きを増してすらいた。
「もうすぐ夏ですね。」
ロイスは、私が観測を始める前に星の昇り始めた夜空を見上げながらそう言った。彼の視線の先の地平線付近のほとんど目立たない場所に、夏の大三角形が、夜空にひっそりと佇んでいた。