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この国では家庭で勉学を修めることは認められているものの、修了試験は、学校へ通っている者と同じものを必ず受験しなくてはならないのだ。そしてそれに合格しなければ、まともな職業につくこともできないというような偏見がこの国の社会には、はびこっている。
「早速今から勉強をはじめましょうか。」
「やっぱり僕は学校に行った方がいいですか?」
私の浮かない雰囲気を感じ取ったのだろう。ロイスは不安そうな顔でこちらをちらりと伺いながらそう言った。
「別にいいですよ。夏や冬はあまり教えられないかもしれませんが、春や初秋は暇ですから。」
とりあえず、ロイスが自分で勉強を進めることができるように羽根ペンの作り方から教えることにした。まず暖炉で砂を熱して羽の先をその砂に突き立てる。しばらく放っておいてから、インクだめと、ペン先を削って真ん中に切れ目を入れて完成だ。それを教えると、やがてロイスは私の羽根ペンも作ってくれるようになった。ロイスの作った羽ペンは、私が作る羽根ペンよりもはるかに使いやすいのだ。教えてみてわかったのだが、ロイスは私が以前教えていた大学生どもよりも、はるかに物覚えがいい。2、3回教えれば、本を読んだりして、あとは自分で技術や知識を高めることができる子供だった。
私たちは、暖炉の前のテーブルに向かいあって座り勉強する。春になって日が伸び、なかなか太陽が沈まないため、腹が立つことにいつまでも空は薄明るいが曇り空のせいで今太陽がどこにあるかもわからない。ついつい時間を忘れて没頭してしまうのは仕方ないことだろう。




