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「それか?それはな真鍮でできててな、磨き続ければ美しく光るぞ。ただし、磨かないとすぐに錆びてしまうから、そういう意味ではお前には向かない時計だが、ロイス君にはいいかもな。きっと真面目な子だろう?」
「そうだな…。ロイスはこれでいいですか?」
「はい」
黙って私たちのやりとりを聞いていたロイスは慌ててそう答えた。
「じゃあ、これをくれ。」
「わかった。今包むから待ってろ。それとロイス、こっちへ来なさい。手入れの仕方を説明するから。」
「はい。」
ロイスは一瞬こちらを不安そうに見つめると、慌ててパタパタとカインの方へ向かって走り寄り、後をついていった。私もゆっくりその後を追う。
「いいか、真鍮の手入れはな、この布みたいな柔らかい布にこの液をつけて丁寧に拭くんだ。この液が手に着くと手が荒れるから、あまりつけないように。わかったか?」
「はい。」
ルーカスが彼らの元へ着くと、もうカインの手入れ講座は始まっていて、ロイスは自分の手の中にある時計を嬉しそうに見ながら手入れしていた。小さな手で時計を丁寧に擦っていく。
「おい、ルーカス。この子にハンドクリームとか買ってあげたのか?手があかぎれだらけじゃないか。」
「ああ、もう買ったよ。」
しばらくすると、窓から夕日が射し込みはじめた。少しドーランに長居をしすぎたらしい。カインはじっと目を向けて静かに差し込む夕日を眺めている。
「日も長くなったもんだよなあ。」
「じゃあそろそろ帰るよ。」




