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別にサボってくれても構わないのだが、生来真面目な性格なのだろう。
私の家の同居人が増えてから、もう2ヶ月近く経つ。長かった冬にも終わりが近づいてきて、もうすぐ2月も終わる。冬場は雪に閉ざされる人里離れたこの場所も、だんだんと暖かくなって、行く手を阻んでいた雪もほんの少しずつ緩んでくる。家がある山の上の木々の若い芽もだんだん色づき、山全体が赤くけぶってきた。死んだように眠っていた大地が息を吹き返し始め、ふきのとうなど、雪にもぐっていた植物も少しずつ顔を出す。心なしか、吹き寄せる風も暖かい。
「さて、一度山を降りて、食料を調達しに行きますかね。ロイスも付いてきてください。」
ロイスはびくりとして、一瞬怯えたような目をするとほんの僅かに掠れた声で、はい、といった。
「明日行きますから、出かけられるようにしてくださいね。」
約束を交わす。明日は朝から出かけなければならないから、観測はできない。まあ、できないこともないがもう若くはないから、もしも今日観測をしたら、明日山を降りられないだろう。特にやることもないから、今日だけは、私も家の中の家事を手伝った。いつもより早くベッドへ入り眠ろうとすると、私より先にベッドにいたロイスが、もごもごと動いているのに気がついた。
「眠れないのですか。」
「すみません。」ロイスは一言謝ると、それきり動かなくなった。