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少年の声は小さくて今にも消えてしまいそうだったけれど、何かこの寒さよりも冷たく、何より気迫がこもっていて、それが彼の頭から離れなかったのだ。少年には、生きる気力すら残されてはいないようだった。そんなくだらない話をする間にも彼の手足からは、血の気が失われていく。
「いかないと殴り飛ばしてでも、ここから追い出しますよ?僕も、自分の家の前に少年の死体があったら、さすがに不快ですから。」
「ご勝手に。こんなもの、もう僕には必要ありませんので。」
彼は、それを聞いた途端、彼を殴り飛ばした。派手に殴り飛ばそうと思ったのだが、彼は生まれてから一度も人を殴ったことがなかったため、彼自身の手まで傷つけてしまった。血の気を失っていた少年の頬も、赤く腫れて、彼がまだ生きているというのを感じさせていた。
「わかりましたよ。とりあえず私の家に入りなさい。」
彼は、少年の頬に現れた赤をみて、少年がまだ生きているということを実感していた。こんな死にかけの少年にも、まだ命が宿っているということが、単純に驚きだったのだ。彼も、そろそろ寂しい山の中での一人暮らしには飽きていた。何より少年を引き取る決め手となったのは、彼が少年を殴った時、わずかにだが、少年の目の奥には反抗の色が宿っていたのである。生気のない少年にも、生きようとする本能は、まだ残されていたのだ。