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夜空を見上げて  作者: 森中満
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星雲たちのスケッチへの着色は、自分のメモと記憶のみが頼りだから、本当はその日のうちにやったほうが効率がいいし、何より正確だ。ルーカスは机を囲むように置かれている曇ったガラス棚の中から顔料を取り出し、コップに入れた水を持って、前の持ち主が飴色になるまで磨き込んで使っていた、この汚い部屋の中で唯一美しい机の前に座り、着色を始める。白、黄、青、赤。様々な色を水で溶いて、ぼかして、色を塗っていく。それを繰り返せば、白かった紙の上には、ルーカスが観測した星雲の色がのる。アウトラインを書く必要があるときは、羽ペンにインクをつけて細く、細く少しずつつけていく。小1時間くらいかければ一つの星雲の着色は終えられる。今日は昨日の分を合わせて、7個分色をつけた。全てに色をつけ終わり、最後に色をつけた星雲の顔料の湿り気が取れたら、さらによく乾かすために、ベランダにある、スケッチを陰干しできる木でできた棚まで持っていく。ベランダにはすでにルーカスはおらず、何やらキッチンの方からかたかたと物音がするから、おそらく夕飯の用意でもしてくれているのだろう。作業部屋には顔料が色褪せるのを防ぐために、窓がないせいで気がつかなかったがあれほど青かった空は、もううっすらと橙色に色づいている。天頂には刷毛でこすったような細くたなびく雲が現れていた。今まさに夜にのみ込まれようとしている、空。ちょうど今は夕方と夜の「あわい」という言葉がふさわしい時間だ。

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